沖縄観光の復興「道半ば」 OCVB下地芳郎会長 新春インタビュー①
- 2023/1/6
- 経済
「一方で、コロナ前から言われていた観光業界の賃金が安い、休みが取りにくいといった労働環境についての改善というのは、人手不足対策という意味で『人を大事にする産業』として、やはり賃金アップを含めた企業側の取り組みが待ったなしだろうな、と。厳しい中ではあるんだけども中長期的な視点にも立って、働く人の環境を整えていくことが今求められていると思っています。
そして政策面での支援ですね。私も何度も何度も言ってますけども、今必要なのは観光政策ではなくて産業政策なんです。だから産業政策の代表としての雇用と金融面での取り組みが必須。このバランスが十分に保たれていないと思っています。需要回復の施策も大事だけども、そもそも経営が痛んでるところにとってはマンパワーが足りないというジレンマに陥っているのが現状ですよね。
残念ながら、この点については業界が求めていた固定費への直接支援という切り口ではなかなか実現していません。一方で、飲食業に関してはコロナ対策でものすごいお金が出ていった。こうした政策上のミスマッチが現状を招いているので、やはり改めて沖縄が今後もリーディング産業として観光を伸ばしていこうと考えるんであれば、その担い手である企業の経営健全化というのは政府が国や県が支援することが不可欠なので、ここをもう少し考えてほしいところです。
観光業界の皆さんからの『今後の10年は大きな観光振興計画の10年でもあるんだけども、自分たちにとっては借金を返す10年』という声は非常に重く受け止めないといけない。僕もOBだからよく分かるのですが、県にはやっぱり産業政策という意味で文化観光スポーツ部は観光業界の実情をしっかり商工労働部にも伝えて、知事・副知事ともきちんと連携しなければいけない。部の間の問題ではないよ、と。総じて、需要が回復していく中で企業を守るという政策をしっかり実行していかなければ十分ではないなという感じがしています」
―下地さんは「沖縄ツーリズム産業団体協議会」でも会長を務めていて、コロナ禍に入ってから観光産業支援についての要請を何度も行っていますね。観光業界にとって実質的にどれくらいの支援になった実感がありますか。
「コロナ対策という意味で雇用調整助成金や持続化給付金だったり、対策をした宿泊事業者に上限500万の支援をしたり、損失が出ている企業には30万円といった収益が悪化したところに対する支援策が実施されていて、全く何も無かったわけではないんですよ。ただこうした規模の額では個々の企業が経営を回復するには不十分と言わざるを得ません。
“20年と21年で、沖縄に本来あるべき1兆円の旅行消費額が蒸発してしまった”という事実に対して、今の支援策が本当に十分なのかと。産業界で等しく頑張らないといけないはずだったのに、飲食業が感染源になるからいうことで、休業要請をしたから飲食にお金を出して、その他は休業要請しないから出さないという形になってしまいました。なぜそんなことになるの、という話ですよね。コロナが長期化する中でこの施策で潤った飲食店の話が変な形で聞こえてもきました。やっぱりこれは政策としてしっかり検証すべきじゃないかなと思います。
全国どこでもコロナの影響を受けてるから、とよく言われます。確かにそうなんだけども沖縄でのインパクトの大きさはやはり他とは違いますよね。全国の都道府県別のGDPに対して旅行消費額の比率を見ると、沖縄は消費額の方がGDPに占める割合は2割で1番大きいんです。沖縄以外の地域は観光も重要なんだけども、製造業でもバランスを取っているということもあるんですよ。だから知事がよく全国知事会で大変だって言ってるけども、他の知事の受け止め方は必ずしもみんな同じではないんですよね。
その意味でも、コロナの影響を最も大きく受けた都道府県は沖縄県という、この認識がやはり全国的にはまだ広まっていないんじゃないかなと感じています」
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