「観光客は戻っても売上は戻っていない」 苦境続く観光業界の不満噴出

 
観光事業者の代表が集まる「沖縄ツーリズム産業団体協議会」

「観光客が戻っていても、観光業界の経営は戻ってきていない」

 県内の観光産業に関連する団体で構成する「沖縄ツーリズム産業団体協議会」の意見交換会で、沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)の下地芳郎会長がそう口にした。
 10月27日に開かれた会合では、10~12月の沖縄県内への入域観光客数見通しや、那覇空港国際線の運行再開などの報告では「回復傾向」という言葉が見られた。だが一方で、意見交換では多くの団体から未だ観光業が人手不足を中心とした苦境に立たされている現状を訴える声が噴出した。

旅行需要は回復傾向、インバウンドも本格化

2022年度10-12月入域観光客数見通し(OCVB発表資料より)

 OCVBによると、10~12月の入域観光客数見通しは「旅行需要は回復基調が続き、観光需要喚起策によって国内客ではコロナ前とほぼ同じ水準まで回復する見込み」。また、10~11月は東京―沖縄線の需要が高く、ホテル稼働率も好調で、さらに修学旅行を中心とした団体旅行も回復傾向にあると報告した。

 さらに、10月から政府の水際対策が緩和されたことで香港や台湾などの国際線の運行再開が相次ぎ、12月には韓国路線の再開も予定されており、インバウンド本格化の兆しも見えてきている。
 こうした現状を踏まえた上で、観光産業の早期回復のための県や国への要請について、人材不足や経営支援、外国人労働者の受け入れなどの項目別で確認した。

全国旅行支援は「旅行社泣かせ」

 意見交換では先ず、観光需要喚起策として10月から開始された「全国旅行支援」への批判が相次いだ。

 沖縄ツーリスト株式会社の東良和会長は「支援はありがたいが」と前置きした上で、全国旅行支援の手続きの煩雑さと対応する環境が十分でないまま“見切り発車”で開始されたことが、ただでさえ人手不足の現場を圧迫している現状を報告した。

「本来であれば全てのスキームが決まって、事業者側の準備が済んだ上で一斉に制度をスタートしなければならないんですが、きちんとシステムが整っていない状態で走らせながらやっているのが現状です」と指摘。宿泊などの予約が急激に増えたことで対応に追われて、長時間労働に耐えられなくなった従業員たちが「どんどん辞めていってしまう」として、「傷ついた観光産業を支援するための事業だが、今回については愚策と言わざるを得ません」と厳しい言葉を放った。

 また、この制度の延長が議論されていることについては、日本旅行業協会沖縄支部の與座嘉博支部長が「期間限定だからこそ職員が耐えて頑張ってくれていますが、単純延長すれば現場がもたないですよ」と強調。旅行時期として10月はまだピークに近い期間であることにも触れ、「1~2月などの閑散期やるのであればまだ分かりますが、本来であればこの制度がなくても人は来てると思います」と意見した。

 さらに、全国旅行業協会沖縄県支部の崎山喜孝支部長が「以前の『GoToトラベル』のような形にしなければ、延長はしなくてもいい」として、「現状では旅行社泣かせのシステム」と断じた。

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