戦前、首里城にあったバスケゴールを復元 首里高生ら、W杯盛り上げる一助に

 
戦前に首里城正殿前に設置されていたバスケットボールゴールを再現した首里高校の生徒ら=8月27日、那覇市の首里城公園
戦前に首里城正殿前に設置されていたバスケットボールゴールを再現した首里高校の生徒ら=8月27日、那覇市の首里城公園

 沖縄バスケットボール情報誌「OUTNUMBER(アウトナンバー)」や首里高校、沖縄県立芸術大学の学生らが、現存する写真と文献を基に、戦前に首里城に設置されていたバスケゴールと、当時使用されていたボールを復元した。今月25日に沖縄などで開幕したFIBA男子バスケットボールワールドカップ(W杯)に合わせて首里城公園内の広場に展示し、沖縄のバスケ史と合わせて来園者に紹介している。

きっかけは一枚の“モノクロ写真” 約100年の歴史

張本文昭教授らが作成した、沖縄バスケ史を説明する横断幕
張本文昭教授らが作成した、沖縄バスケ史を説明する横断幕

 復元のきっかけは一枚のモノクロ写真だった。アウトナンバーの金谷康平GMの知り合いが、1931年に撮影された首里城正殿の写真の中に、木製のゴールが写っていることを発見。その事実を伝えられた金谷さんが深い興味を示し、沖縄県立芸術大学の張本文昭教授と共に文献をあさって沖縄のバスケ史を調べ始めた。

 すると、1905年に首里城を校舎としていた県立高等女学校(のちの県立第一高等女学校)の生徒たちが、竹竿の先端に括り付けた籠に球を入れるバスケに似た競技を行っていたことが琉球新報の記事で分かった。さらに1923年には当時、東京高等師範学校(現筑波大学)の学生だった玉城亀寿さんが島尻郡であった「体操講習会」で、現代で普及している競技バスケの指導に当たっていたことも判明した。

アントナンバーの金谷康平GM
アントナンバーの金谷康平GM

 これまで沖縄のバスケ熱の高さは戦後27年間に渡る米軍統治下の時代に、バスケ大国である米国の影響を受けて醸成されていったというのが通説だったが、戦前から既に市民の間に普及していたことを明らかにした。

 知られざる歴史を掘り起こした金谷さんは「自分自身が単純に沖縄バスケの歴史を知りたいということがスタートでした。調べてみると約100年もの歴史があり、今日の沖縄の熱量はその頃から始まっていることが分かりました。まだまだ掘り起こしていきたいですが、アウトナンバーでは沖縄バスケ史を体系的にまとめていくことが活動目的の一つなので、今回成果を挙げられたことは良かったです」と喜ぶ。

首里で「100年祭」9月3日まで

戦前に使われていたバスケットボールを再現
戦前に使われていたバスケットボールを再現

 これらの事実が判明したことを受け、アウトナンバーはW杯沖縄ラウンドが開催される8月25日~9月3日に交流型イベント「沖縄バスケットボール100年祭@首里城下町」を開催。その一環として、木製ゴールと当時のボールの復元に取り組んだ。

 ゴールは首里高校の有志の学生が担当。知り合いの建築会社や、2019年の火災で正殿などが消失した首里城の復元に取り組む宮大工の協力を得て設計、材料の確保を行い、ノコギリで木材をカットして組み立てた。既に現役を引退したが、同校のバスケ部だった3年生の知花史騎(ひとき)さんは「初めて戦前の首里城にバスケゴールがある写真を見た時は驚きました。完成度が高く、いいものができたと思います」と満足そうに語った。

 ボールは県立芸術大学の学生が作った。本物のバスケゴールを牛革で覆い、繋ぎ目を縫って完成させた。

 バスケゴールは8月28日に首里城に隣接した県立芸術大学の入口に移設し、9月3日まで展示する。また、9月2、3の両日には首里高生が首里城の下町を案内するイベント「バスケゆんたく散歩」も開く。

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長嶺 真輝

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ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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