沖縄に古くから伝わる武道「沖縄角力」がボリビアでも

 

 沖縄の反対側に位置する南米のボリビアには沖縄県系人移住地のオキナワ村(コロニア・オキナワ)がある。ボリビア政府から正式な行政区として認められ、公式地図にもOKINAWAの文字が記されている。日本国外でオキナワの名称を持つ唯一の行政区である。

 オキナワ村では、沖縄の行事や伝統文化が残っており、豊作を願う「豊年祭」や三線、エイサーなどが行われている。中でも興味深いのは、沖縄県に古くから伝わる武道のひとつ「沖縄角力」。

 ボリビアで一度途絶えた歴史もあるが、ボリビア沖縄角力振興会が発足し、地域の行事として親しまれている。今ではオキナワ村に住むほとんどの男性が沖縄角力の経験を持っている。

 沖縄角力とは何か、オキナワ村で受け継がれる沖縄角力大会の様子など、沖縄角力経験者に話を聞いた。

沖縄角力とは?沖縄では久米島が盛ん

 沖縄角力は、沖縄が琉球国だった時代から伝わる伝統文化で、角力着(柔道着)を着用し互いに後ろ帯をつかんだ状態から投げ合う独特のスタイルを持つ。オキナワ村では年に1回または2回大会がある。

 技は全てしまくとぅばで名付けられており、沖縄県内では特に久米島、那覇市、金武町が盛んな地域として有名だ。しかし、育つ地域によって沖縄角力を経験したことがない、見たことがない人も多い。

 面白いことに、ボリビアのオキナワ村に来て沖縄角力を初めて経験する人もいる。沖縄角力についてボリビアの青年は「ここでは全員といっていいほど、沖縄角力をしたことがあるけど、沖縄では角力をしたことがない青年が多くて驚いた」と話す。

 また、沖縄からボリビアに来て、三線を習い始めたという人もいるのだ。沖縄から最も遠い南米のボリビアで沖縄の伝統文化を教えてもらうのは不思議なことだが、オキナワ村には沖縄では味わえない沖縄が残っているということを意味するのであろう。  

 さらに、ボリビアでは、オキナワ村の入植記念祭典など大きな式典があると、隣国のブラジルやペルーから選手を招待した4ヶ国対抗沖縄角力の国際試合も行われる。ボリビアだけでなく南米各国の沖縄県系人によって沖縄角力が親しまれていることに驚く。

オキナワ移住地入植50周年の記念行事として行われた沖縄角力大会の国際試合(2004年)

成人式の恒例行事として開催、土俵サイズもルールも同じ

 現在オキナワ村では、新成人を祝福して、成人式の恒例行事として沖縄角力が開催されている。ボリビア沖縄角力振興会が中心となって地域の体育館に砂を運び、土俵を作る。土俵は本場沖縄の土俵と同じサイズで作られる。

 ルールも同じだ。角力着をつけ、紅白の帯とハチマキを締める。右四つに組んで勝負が始まる。勝敗は、土俵の外に出たり、手が地面についても負けにはならない。相手の背中または両肩が地面についたら1本。3本勝負で2本先取で勝ちとなる。

3歳のちびっこから大人まで参加

 大会の出場者は、下はかわいい3歳のちびっこから上は40代までいる。ちびっこ達が参加する未就学児の角力から始まり、その後、小中学生の部、高校生以上の一般の部が行われる。

 小中学生の部は、低学年から順に取り組み、勝ち抜き戦で負けるまで続ける。おじぃ、おばぁは、孫やひ孫の取り組みがあると席を取り、声援を送る。

小学生の部の沖縄角力

 一般の部は、体重別で軽量級、中量級、重量級を行い、最後に体重無差別級の取り組みが行われる。

中量級の沖縄角力

 会場は熱戦に大きな声援と歓声が沸き起こり、指笛が鳴り響く。試合は夜中まで続き、力強い迫力ある角力に応援にも熱が入る。

無差別級で2連覇した比嘉謙悟さん

 現在、オキナワ村で最も強い青年は、無差別級で2連覇した比嘉謙悟さん(25歳)。2018年に無差別級7連覇の王者を破る決戦を制し、会場を盛り上げた。

女性の花角力も人気

 最近では、白熱した試合の合間に行われる女性の花角力も人気だ。成績順位には関係のない花角力は女性も角力を楽しみながら身近に感じることができる。  年々、花角力に出場する青年女子が増え、出場者を締め切るほど。「沖縄は女性が強いんだよー」と言うが、ボリビアでもその風潮があるのだろうか、頼もしい存在である。

青年女子の花角力

一度途絶えた歴史、ボリビア沖縄角力振興会の発足

 オキナワ村で老若男女問わず親しまれている沖縄角力。始まった当時は勝ち抜き戦が主だったが、1978年以降は体重別の階級制が取り入れられ、成人式の恒例行事として沖縄角力が行われてきた。

 しかし、年々出場選手が少なくなり、1985年を境にしばらく途絶える。  沖縄角力を復興しようと動き出したのは、沖縄角力を愛する有志ら。21歳で沖縄の久米島からボリビアに移住した城間清英さんが初代会長となり、1991年に「ボリビア沖縄角力振興会」を発足、沖縄角力を継承、拡大させる取り組みが始まった。

アイデンティティを再確認できる貴重な伝統文化

 ボリビア沖縄角力振興会の発足後、学校の放課後の時間に沖縄角力を教えた。そのおかげで、3世の20代後半から30代の男性は技をかける方法も知っている。 

 現在、世代は3世や4世の時代。沖縄角力を習っていた放課後の時間はいつしかなくなり、「沖縄角力大会の出場選手の減少、技の伝承に課題が見え始めている」と経験者はいう。世代が進み、オキナワ村で受け継がれる伝統文化の保存と継承に力を入れる時期なのであろう。

 これまでも世代交代による課題はあったが、文化を継承しながら発展させてきた。世代の移り変わりと共に、文化のあり方や継承の方法にも変化はあるが、沖縄角力がオキナワ村にとってウチナーンチュとしてのアイデンティティが再確認できる貴重な伝統文化となっていくことに変わりはないだろう。

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安里 三奈美

安里 三奈美

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ボリビア在住3年、1児の母。フリーライターとして観光や沖縄県系コミュニティーについてWEBや紙媒体で執筆、寄稿等を行う傍ら、家系図や家族史・自分史の制作会社の代表も務める。2011年に県系の若者をつなぐネットワークを構築、県系若者が集う大会を世界各地で開催。2015ミスうるま。著書に「刻まれた21cm」(文芸社)

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