この道20年のライブ配信コンサルタントに聞く ネットメディアの現在と未来

 

 コロナ禍で演劇やコンサート、講演会など、人々が密集・密接するイベントの多くが中止に追い込まれる一方、ネットを介したライブ配信型のイベントや映像・音声コンテンツが新たなエンタメの在り方として浸透しつつある。

 既存のテレビ・ラジオといった電波メディア、YouTubeなどに代表される動画投稿系サイトに続く「ライブ配信」の今と未来とは。

 沖縄県内を中心に東京やアメリカでもライブ配信の運営に携わるなどする「クリックボイス沖縄」の創業者でありライブ配信コンサルタント、宮城光司さんに話を聞いた。

ライブ配信が持つコミュニケーションの魅力

 宮城さんの自宅兼スタジオ「かえるスタジオ」。

 吸音材が敷き詰められた壁や天井、ざっと見ても10本はあるマイクの数々、5、6方向から演者を狙う照明類、床を這うケーブル類。機材好きにはたまらない空間だ。

 現役のラジオディレクターが、ラジオ番組の裏話や作り手側としての思いを赤裸々に語るプログラム「せいじんDのラジオ向上会議」のライブ配信が行われていた。

 宮城さんは「YouTube Live」や「ニコニコ生放送」など、複数のライブ配信プラットフォームへと同時に映像を送り出す。

 出演者のせいじんさんが「飲み会の翌週に上司が『キツいこと言っていたようで、ゴメンな。覚えてないけど』と謝ってきた」との話題を出すと、画面上では「せいじん君が思ってるより、大人は大人じゃないの」と、反応が文字で即座に返ってくる。そのやり取りからどんどん話を展開させていく。このコミュニケーションこそがライブ配信の最大の魅力だ。

ライブ配信市場「この1年で一気に変わる」

 宮城さんがクリックボイス沖縄を設立したのは2000年。その当時から、ネットを使った双方向型のメディアをどのように活用し、どのようなコンテンツを作り上げていくべきか、20年間にも渡り試行錯誤を繰り返してきた。

 YouTube、Netflixがネット上の動画コンテンツを席巻する中、宮城さんは「次は必ずライブ配信が来る」と言い切る。

 当初から宮城さんは、2022年には沖縄でも5Gが普及し、ライブ配信の時代が来ると読んでいた。ネット上での配信元と視聴者との間のタイムラグがほぼ全く無くなり、リアルタイムでのやり取りが可能となるためだ。しかし、このコロナ禍でライブ配信の需要が急増。「この1年で一気に変わる」と未来予測を大幅に縮めた。

 「コロナで人が接触しなくなって、ZOOMなどのツールに慣れてきました。『あ、こんなコミュニケーションのやり方もあるんだな』と多くの人が認識し始めてから、マーケットは100倍ぐらいとも言える勢いで成長しています」

 配信関係の機材は日進月歩。2週間に1回ほどのペースで新製品がリリースされており、一気に革新をもたらす機材が登場し続けているという。

好きで続けたからこそ、時が来た

 動画配信事業はなかなか収益化できず「とにかく好きでやっていた」という宮城さん。もともとはいわゆる“機材オタク”。これまでつぎ込んだ映像や音声の機材代も「1000万円はいっていると思う」。長らくラジオ番組の音響スタッフを続け、クラブDJとして活動したこともあるなど、常にたくさんのメカやガジェットに囲まれてきた。

 そして、今。新型コロナの影響で遠隔での双方向コミュニケーションが発達した結果、動画配信事業の収益化が順調に進んでいる。トークイベントなどの出張配信の実績もどんどん積み重なってきた。

 好きが高じて20年前から走り始め、実験と失敗を繰り返していた。だからこそ、動画配信が注目を集めて各社が新規で乗り出そうとしている現在、宮城さんは、県内では独走フライング状態だと自負している。

 「でも、そのフライングは、もし他の企業が資金を投入したらいずれ追いつかれるはずです」。そう冷静に見据えながら「だからこそ次を仕込んでおかなければなりません。先にライブ配信のいろんな方法や在り方を試して、さらなる収益化を編み出す必要があります。そのノウハウを提供するというサービスにもつなげられたら」と視野を広げている。

音声配信がブーム「次は耳しか空いていない」

 動画配信のみならず、音声配信にも注目が高まっているという。

 動画コンテンツは一般の人が新規参入して人気を得ることが難しくなった。特にYouTubeでは高いトークスキルなどを持った芸能人が参加、視聴者からの人気を集めており「素人は勝てない」状況になった。動画編集に投入する金銭的・技術的コストも求められる。

 そこで再注目を浴びているのが、「Podcast」。主にラジオ番組のような音声コンテンツを配信するサービスだ。

 「今、Podcastの第三次ブームが来ています」と宮城さん。

 第一次は出現した当初、第二次はブログなどにプラグインで音声プレーヤーを埋め込められるようになった時だった。

 第三次ブームの理由は、ネット上の映像コンテンツが充実した結果「次はもう耳しか空いていないから」。Podcast版のYouTuberとも言える、新しい形のスターも出現しているという。映像に比べて手間をかけずにコンテンツを作り出せることも追い風となった。

 実際に、ネットコンテンツの先進国の1つ、アメリカではPodcastが生活の中に入り込んでいる。市場調査を行うエディソンリサーチ社の2018年の調査結果によると、18歳以上の44%がこれまでにPodcastを利用したことがあると回答している。

 車の運転やジョギングをしながら“本を聴く“オーディオブックの市場も拡大している。忙しくて読書に時間を費やせない人々を中心に人気を得ており、近年さまざまなアプリが登場している。

「ライブ配信特有の文化が出来上がってくる」

 今から1年後、2021年夏のライブ配信やエンタメの盛衰を宮城さんに予測してもらった。

 「新型コロナのワクチンや、三密を防ぐ技術の進歩で、イベントは『リアルで楽しむ』と『ライブ配信』のハイブリッドになっていると思います。同じイベントでもそれぞれに料金設定がされて『リアル』は高価で『配信』は安価で。さまざまな分野のイベントがそうなるのではないでしょうか」

 ライブ配信が主流になるからこそ「配信だからこそ提供できる魅力」が求められるとも述べる。

 「例えば音楽フェスなら、現場で観た方が楽しいに決まっています。これまでのフェスの形態をただそのまま流すのではなく、配信は配信なりの楽しみ方や文化が出来上がってくると思います。(不特定多数とのコミュニケーションに特化した)ライブ配信専用の司会者やMCという新ジャンルが出てくるかもしれません」

 近い未来では当たり前になっているかもしれない、ライブ配信エンターテイメントの創成期。その芽をどのように伸ばしていくのか。クリックボイス沖縄と宮城さんの次の一歩は先へ進んでいく。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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