ゼロから始めたビール作り 金秀HDの挑戦 沖縄原料で新開発も

 
経営企画部 與座隆徳係長(左)と醸造担当 仲程學さん(右)=沖縄県立図書館

 近年、クラフトビールの沖縄県内での製造が盛んだ。本島・離島合わせて13か所のブルワリーが個性豊かなビールを生産している。

 製造業や小売業などを展開する金秀ホールディングスも、今年2月から本格的なクラフトビールの製造を開始した。同社が運営するビアパブ「カネヒデクラフトブルワリー」(那覇市旭町)では、「ペールエール」「IPA」「ヴァイツェン」「スタウト」「ピルスナー」の5種類を自社醸造し、販売している。「令和4年度沖縄県優良県産品推奨商品」にも認定されるほど好評だ。

 当初はクラフトビールについて素人集団だったプロジェクトチームは、いかにして商品を作り上げたのか。気持ちを一つにできたのは「ビールが好きだ」という純粋な想いがあったからだった。

ノウハウゼロからのクラフトビール作り

(金秀ホールディングス提供、以下同)

 プロジェクトが発足したのは、2020年の秋。コロナ禍がきっかけだった。

 「外出自粛の日々が続いてコミュニケーションの場が取れなくなってしまいました。世間の元気を取り戻したいという想いからクラフトビールの企画が始まりました」(経営企画部 與座隆徳係長)

 それぞれが本来の業務を並行しながら社内プロジェクトが立ち上がった。しかし、そこにノウハウと経験を持つ者は皆無で“ビール好き”という一点のみで集まったメンバーだった。

 「何から始めて良いのか分からないくらい、やることだらけ。コンセプト・ターゲット・デザインの設定、製造販売免許の取得など手探りで進めて行きました。設備投資が想定外の額に上り、黒字化は一筋縄ではいかないという覚悟も生まれました」(與座さん)

 誕生したコンセプトは「美味しいビールを飲んで、日々の生活を力強く切り開く」。商品ロゴは、ヘラと麦を中央で重ね合わせた。

逆境を跳ね返す商品開発

 沖縄を代表するクラフトビール作りに向けた戦いが始まった。

 ビールの醸造では、些細な温度の変化や工程の違いが、味に影響を与える。開業へ向けて、県外ブルワリーでの研修が始まったのだが、ここでも試練にぶち当たる。

 「コロナの影響で、研修の日数が限定されてしまいました。1週間しか研修できず、充分なノウハウを得ることが叶いませんでした。レシピや原料の配合まで、書籍を読み漁って少しずつ導き出していきました」(醸造担当 仲程學さん)

 約3年に渡る研究開発の末に、最初に商品化されたのがIPA・ペールエール・ヴァイツエンの3種類。まずは広く受け入れられるような王道な味わいを目指した。

 今年3月に開店したブルワリーに併設されたパブには、初週に570名近くが訪れ、再仕込みの為休業せざるを得ないほどの反響があった。

今後は沖縄食材とのコラボを画策

 醸造責任者の仲程さんは「15坪のマイクロブルワリーだからできる、大手には無い個性が光る商品を作りたい」と、今後の商品展開に意欲を見せる。

 沖縄にあるブルワリーという特性を前面に打ち出し、長命草やピィパーズ、リュウキュウヨモギなどの県産の原料を活かした商品開発も進めている。

 他業種が一つになった企業グループならではのエコな取り組みも実現させた。ビールの醸造で発生した麦芽カスは、グループ企業の金秀バイオと金秀ファームが肥料として活用している他、提携している養豚場に飼料として提供しているという。

 各商品は、カネヒデクラフトブルワリー(那覇市)、タウンプラザかねひでにしのまち市場(那覇市)で販売されている他、県内ホテル数店舗に卸されている。

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ナガハマ ヒロキ

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ナガハマヒロキ
ラジオパーソナリティ・ライター。
担当番組は、ナガハマヒロキの週刊リッスン(RBCiラジオ)、しんちゃんヒロちゃんごきげんラジオ(ROK)、Connect(FM沖縄、金曜日担当)など。
喋り手・書き手として豊富な取材経験を持ち、対象を当事者の視点から捉えた切り口で幅広く執筆を行う。趣味は競馬と大相撲観戦。

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