SCOM・藤本代表に聞く 地元参加型ファンドで15億6千万円調達、北部テーマパーク

 
インタビューに答えるSCOMの藤本和之代表=1月、浦添市

 コンサルティング会社「刀」(大阪市、森岡毅CEO)が発案し、2025年前後の開業を目指してジャパンエンターテイメント(名護市、加藤健史社長)が計画している北部テーマパーク事業に関連し、地元参加型ファンドを組成した中小企業支援のファンド運営会社「SCOM」(エスコン、浦添市、藤本和之代表)が総額15億6千万円を調達してジャパン社へ投資した。出資者数は24の個人・法人で、県内外から寄せられたという。

 沖縄という一地方の事業で、なぜこれほど大きな額を集めることができたのか。今回のファンド組成はSCOMが掲げる「中小企業を支援して沖縄の所得水準を上げる」というビジョンとどのようにリンクしているのか。藤本代表に聞いた。

「当事者として喜べる人を増やす」

ー今回、地元参加型ファンドを組成した経緯を教えてください。

 「刀さんが沖縄総合事務局に地元から投資を募ることができないか、というような相談をされていて、その流れでエスコンに『一度話を聞いてみてほしい』と連絡がきました。普段から中小企業向けの出資関連の手続きで金融庁の出先機関である沖縄総合事務局とはやりとりがあるので、私たちの名前が出たようです」

ー初めに相談を受けた時の印象はいかがでしたか。

 「ファンドの組成は構造上できると思ったし、やった方がいいと思いました。その理由は、まず森岡さんがUSJを再建したりして非常にビジネスの実力のある方で、私も以前から森岡さんの著書を読んだりしていました。テーマパーク事業をやるなら刀さんが日本で一番力があるし、沖縄という地理的な魅力もあって、事業自体が成功する可能性は高いと個人的に感じました」

 「ただ、うまくいった時に起こることもなんとなく頭に浮かびました。事業の成功が大きければ大きいほど、沖縄で生活してる人や事業者が『また内地の会社が沖縄の観光資源を使って上手に商売をやってる』という感情を抱いてしまうことです。将来的に成功する可能性の高い事業であれば、それができる前に何かしらの形で関与したいと考える沖縄の中小企業は多いと思います。もし関わって成功すれば、当事者側の視点で純粋に喜べる。私たちはエンターテイメントは専門外で事業的に関わる事はできないので、『当事者を増やす』というアプローチであれば役に立てるのではないかと考え、ファンドを組成することに決めました」

出資の背景に「沖縄への貢献」

沖縄の美しい海(資料写真)

ー24の出資者は主にどういった方々でしたか。

 「社数で言えば、多くは沖縄の中小企業です。それと、沖縄で何かしらのビジネスを展開している県外の大企業もいました。沖縄でこういうビジネスがある中で『他人でいたくない』という方もいましたし、皆さん単純に沖縄が好きで『沖縄が良くなるのであれば少しでも貢献したい』と話す方もいました」

ー15億6千万円という調達額をどのように捉えていますか。

 「ファンドの組成は初めからやった方がいいと思いましたが、実は自信はそこまでありませんでした。沖縄の中小企業に1,000万円出してもらうのも大変ですし、それを10社集めてやっと1億円になります。ただ、引き受けたからにはなんとか億には乗せたい、そのためには相当頑張らないといけないと考えていました」

 「しかし蓋を開けてみれば、まずこのテーマパーク事業に対する企業さんの関心が非常に高かったんです。刀さん、森岡さんのネームバリューがあり、その実力に対する信頼度が高く、『あそこがやるんだったら』ということでスムーズに出資をしてくれる方が多かったです。私たちも非常に成功の見込みが高いビジネスだと思っていて、エスコンとして1,000万円、ROS(藤本さんが設立し、代表を務める企業)としても1億円を出しています。これは義務感ではなく、それだけ魅力のある事業だと感じているからです」

 「それと、新聞やテレビなどのメディアがしっかり取り上げてくれたことも大きかったです。ファンドは馴染みの薄い人からすると『怪しい』と思われたりしますが、報道のおかげで信頼感を高めることができました。いくら私たちがSNSで呼び掛けても何万人にリーチすることはできませんが、新聞やテレビに載れば非常に多くの方々に知ってもらえます。マスメディアの効果はとても大きかったですね」

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