沖縄の貸切バス、年間収入8割減 秋からのピークに向け人手不足の不安

 
観光地で降車する乗客を案内するバスガイドの與古田常美さん(右)=7月中旬、沖縄県うるま市(長嶺真輝撮影)

 平時では、修学旅行や大型クルーズ船客などによる貸切バス需要が旺盛な沖縄。しかしコロナ禍に入り人流が激減してからは、それ以前と比べて県全体の貸切バスの年間収入額が約8割も減少した。第7波により県内外で感染症拡大が再び深刻化しており、不透明さもあるが、現状では9〜10月頃からピークを迎える修学旅行の需要は戻ってくる見通しだ。ただ、この2年強で運転手やバスガイドの離職が目立ち、人手不足に対する業界の懸念は強い。

コロナ禍でも清掃続ける バスガイドの努力

 「畳の材料になるビーグは県内の90%をここ照間(うるま市)で作っていると言われます」「1971年に完成した海中道路は、4つの島を1本の道路で結んでいます」

 7月中旬、沖縄本島中部。中部観光バス株式会社(沖縄市)が実施したモニターツアーで、同社に勤めるバスガイド歴10年の與古田常美さんが、車窓に映る地域の特徴や歴史を淀みなく解説していく。ただ感染症対策で飛沫を防ぐため、通常とは反対にフロントガラスの方を向いた「背面案内」でのアナウンスだ。

 「普段と逆だから、右と左を間違えちゃいますね。前を向いて説明するのはやっぱり違和感があります」。ガイドをするのは、この日が3年ぶり。乗客との掛け合いもまだ制限され、戸惑いはある。それでも話をするのが好きな自身にとっては、天職のような仕事。「やっとここに戻ってこられたという感覚はあります」と嬉しそうに話す。

モニターツアー後、笑顔で記念写真を撮る参加者たち

 2年前、コロナ禍に入った途端に貸切バスの予約はほぼキャンセルとなり、仕事がなくなった。それでも「いつお客様が戻ってきてもいいように」と、1カ月に1回はガイドのメンバーで所有するバスの清掃を続けてきた。「今はお客様が不安にならないようにしっかり感染対策をしながら案内をしていきます。また話せるようになれば、楽しみの方が大きいです」と笑顔を見せた。

一時需要回復 感染再拡大でキャンセル

 沖縄県バス協会が県内の会員貸切バス事業者19社への聞き取りを基にまとめた資料によると、コロナ禍に入った2020年度の各社総収入額は124,217万円となり、19年度と比べて81.8%減収した。

 昨年の秋口から年末にかけて感染状況が改善したことにより、需要は一時回復傾向にあったが、今年の年明けから再び感染が拡大。全国各地でまん延防止等重点措置が実施され、再開予定だったGOTOトラベル事業も引き続き中止となり、またも予約のキャンセルが相次いだ。そのため、21年度の総収入額は163,246万円と若干持ち直したものの、19年度比で76.1%減となり、丸2年に渡り厳しい状況が続いている。

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