沖縄の貸切バス、年間収入8割減 秋からのピークに向け人手不足の不安

 

トラック運転手に転職した人も

コロナ禍に入ってからの経営状況を振り返る中部観光バスの島袋隆会長

 前出の中部観光バスでは国の雇用調整助成金を活用したり、コロナ禍で人手が不足した商工会議所の補助金申請窓口や中部保健所に職員を派遣したりするなどして、雇用維持に努めた。バスは所持しているだけで保険料などの維持費がかかるため、この機会に稼働年数の長いバスを一部廃棄したり、休車申請をして保険料を圧縮したりするなどの経営努力も重ねたという。

 同社の島袋隆会長は「1年目は身を切ることしかできなかったけど、去年くらいから単月で黒字になることはありました。ただそれは雇用調整助成金が入ったから。それが続くかと思ったらまた緊急事態宣言やまん防になって赤字になる。その繰り返しでした」と苦しい2年間を振り返る。

 業界全体では減車のほか、この期間に離職したバスガイドや運転手も多いという。県バス協会の慶田佳春専務は「仕事がないので、バス運転手でトラック業界に移った人もいるという話も聞きます。コロナ禍以前からトップシーズンに合わせたバスの台数の確保は難しかったのですが、需要が回復した時の人手不足はとても懸念しています」と話す。

 例年では、キャンセルが出ることも見越して全体でオーバーブッキングぎみに予約を受け付け、受けた社が対応できない状態になれば他社に仕事を回すなどして融通し合って対応していた。しかし今年はバスの台数やマンパワーが限られているため、「実際に対応できる範囲で予約を受けている状況」(慶田専務)だという。

 慶田専務は「コロナ禍も3年目を迎え、3回目のワクチン接種も進み、治療薬の開発も進んでいる中、新型コロナウイルスと共存しながら社会活動を動かしていく機運も出てきていることから、貸切バスが早急に需要を回復できるように切に願っています」と語った。

非効率な運用の改善を

2年4カ月ぶりに沖縄に寄港した大型クルーズ船客を迎える貸切バス=6月30日、沖縄県本部町の本部港

 一方、コロナ禍に入る以前から業界にはある課題がある。バス関係者が苦々しい表情で説明する。

 「ピーク時期はバスが慢性的に不足するから、旅行会社が異なるバス会社を保険的にダブルブッキングすることがあるんです。以前には、クルーズ客を迎えるために100台を予約したのに、20台しか使わないこともありましたよ。使わないバスは別で稼働できたかもしれないのに」

 非効率な運用は、これだけにとどまらない。「旅行会社がバスで回る場所を記した行程表をバス会社に出すのも、稼働日の直前になることが多いです。もっと早めに出してくれたら、1日でより多くの旅行客に対応できると思うのですが…」

 コロナ禍において、沖縄観光では多くの業界で人手不足が深刻化している。それにより観光客の受け入れの質を落とさないためにも、人や物の数が限られている今だからこそ、業界全体で連携を強め、より効率的な運用を図っていくことが互いのメリットに繋がりそうだ。

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