後継者問題深刻化に拍車 2020年回顧・帝国データバンク沖縄支店長に聞く

 

 新型コロナウイルスが猛威を振るった2020年は、全世界のあらゆる分野の業界が打撃を受けた年になった。根本的な解決策は未だ見出せていないため、依然として感染拡大の収束の目処は立たないままだ。さまざまな企業の経済状況を調査して情報提供をサービスする「帝国データバンク」沖縄支店の水城利治支店長に2020年の県内景況や県経済の課題点などについて聞いた。

2020年を振り返る水城利治支店長

コロナに振り回された1年

 ―現在もコロナ禍真っ最中ですが、2020年の沖縄について感じたことは。

「3月までは観光が好調で、文字通り右肩上がりの状況だったが、4月の緊急事態宣言以降、様子が一変して経済状況は悪くなっていった。景況は基本的に観光客の増減に伴った動きとなっており、完全にコロナに振り回された1年だった」

 ―県内企業への影響は。

「各方面、特に観光産業は言うまでもないと思うが大打撃を被っている。ただ一方で、倒産件数でみると11月は3件で、前月比で2件減、前年同月比では1件減。年末時点での現状で言えば、コロナが倒産に“直結”しているというわけではない。銀行などの緊急融資である程度持ち堪えていると考えられる。
 コロナ禍はある意味災害みたいなものだ。2016年の熊本地震の際に現地の状況を見たが、この時も緊急的な融資などの措置があったため、被災してそれからすぐにバタバタと倒産していくということはなかった。その後の借り入れの返済のタイミングでどうなっているかがポイントになってくる。

 ただし、違いもある。今回のコロナの場合は先ず、いつ収束するかが分からないので、終わりが見えないということ。それに加えて、Gotoキャンペーンも含めて人と経済の動きに“波”があり、その上がり下がりが予測できないということだ。営業計画が立てにくく、苦労する部分だと思う。
 例えばホテルならば、全く人が来ないことが分かれば下手に開けるよりも営業をストップし、家賃交渉に舵を切るなどの判断ができる。しかし状況が落ち着き、ここ最近のGotoのように再び人が動きだすと商機を逃したくないという気持ちも出てくるので、判断が難しくなってくるだろう。

 現在でも物の行き来は回復してきているが、人の動きは状況次第ですぐにでも止まってしまう。特に沖縄経済は観光産業が基幹にあるので、ダメージの受け方としては極めて厳しい部類の地域だ」

人通りが減った国際通り

事業継承が切実な問題

 ―沖縄経済についての課題・問題点は。

「2019年3月に沖縄に来たが、観光客数が伸びていた時期とあってかなりの活気を感じた。140万人のレベルではないなと。ただ、インバウンドへの短期的対応も含めてバブル的な側面も否めないとも感じている。コロナ禍になり、観光業に携わる人たちからは『地元向け商売をしっかりしていかないといけない』という声もよく聞こえてくるようになった。
 入域観光客数は伸びている一方で、観光業含めて地元が潤っておらず低賃金のままという問題もあるが、これは本格的な調査を実施して構造の本質的な部分をもう少し見極める必要がある。

 また、後継者不足の問題も深刻だ。これは全国的にも以前から話題になっている問題だが、コロナが拍車をかけたと思う。1972年の復帰のタイミングで起業した人たちが現在は70代にさしかかり、現在は世代交代の時期だ。時代的に必ずしも子どもが受け継ぐという流れも無くなってきているため、世代交代がスムーズにいかなくなっている。
 沖縄は立地的な部分でも地元に馴染んだ企業が多く、業務効率化を行うと“身売り”したという印象を与えることもあるため、こうした動きに対してある種のハードルの高さが見受けられ、消極的な傾向がある。確かに寂しさを感じることはあるかもしれないが、結果的にみると企業側へのデメリットはほぼない。
 後継者についてはもっときちんと認識が広まらなければ、これからさらに大変なことになっていく。会社や企業がどんどん減っていき、それに伴って雇用が無くなる。非常に切実な問題だ」

 ―2021年以降の展望は。

「おそらく年が明けて3月頃までほとんど状況は変わらないだろう。強いて言えば、東京オリンピックの開催かワクチン接種の普及のタイミングがターニングポイントとなると思うが、見通しも全く立たないので現時点ではなんとも言えない。

 ただ、このタイミングで飲食店を出店するという新しい動きもある。これまでは場所や人員が確保できずに出店を断念していたが、コロナによる既存の店の閉店で立地の良い場所が空いた所に照準を定め、新たにオープンするという流れだ。厳しい状況ではあるが、逆にそれをチャンスと捉えている企業も少なからずある。

 また、沖縄という立地を生かした1つの可能性としては『ワーケーション』の提案も挙げられるのではないか。コロナ禍で働き方が変化したことを受け、実際に動きも出てきているが、今後さらに長期滞在を促せるような素地の整備を進めれば、沖縄は全国でも“敵なし”になれるポテンシャルは十分ある。その延長線上に、これまでとは違った観光の形も見えてくるのではないかと思う」

帝国データバンク
https://www.tdb.co.jp/index.html

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真栄城 潤一

真栄城 潤一

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1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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