【eスポーツ@沖縄】ゲームと街を結びつける試み「北谷ゲームコミュニティーデー」

 

 子どもから大人まで、沖縄県内のゲーム好きたちが自分の好きなゲームを持ち込んで皆で遊ぶ「北谷ゲームコミュニティーデー」が9月24日、北谷町のベッセルホテルカンパーナ沖縄で開催された。この日は述べ約60人が参加して、アメリカンビレッジにあるホテルの一角に設けられたゲームスペースで様々なゲームに興じて、休日を楽しく過ごした。
 主宰は県内で数々のゲームイベントを開催し、ゲームコミュニティ「美ら組」を率いるJ-Snakeこと新里渉さんだ。様々なイベントを企画している中でも、今回の北谷ゲームコミュニティーデーは「カジュアルに裾野を広げていくための取り組み」と位置づける。さらに、普段は基本的に家でプレイするゲームを、プレイヤーが街中に繰り出して集まって楽しむことでeスポーツと街のにぎわいとを結びつけるという意味合いも持っており、今後の県内のeスポーツシーンに一石を投じる試みでもある。

「仲間が増えるのが嬉しいんです」

対面で話しながらゲームも交流もできて、仲間が増えるのが嬉しいんです」と、少し照れくさそうに笑顔で話すのは、高校生の“リリリ”さん(ゲームアカウント名)。任天堂の『スマッシュブラザーズ』のプレイヤーで、基本的に家でオンラインでプレイしていたが、新里さんの活動を見つけて、今年からイベントに参加し始めたという。8月に行われたスマブラの大会イベントでは、見事準優勝を果たした。

 プレイヤーたちはゲーム中では激しい熱戦を繰り広げるが、それが終わると和やかなムードで互いのプレイについて分析し合う“感想戦”をしたり、一緒に他のプレイヤーたちの対戦画面を熱心に眺めながら談笑したりするのが、イベントの光景だ。

 参加者の年齢層にはバラつきがあるが、そんなことは一向に介さずそれぞれが楽しんでいるのも特徴的な雰囲気の1つ。リリリさんは「年上の面白い人たちとも話せて、本当に楽しんでます。対戦して負けたり、苦戦してたりするとアドバイスももらえて」と話し、「とっても温かい場所です」と付け加えると、コントローラーを握りしめながらモニターの前に戻っていった。

ゲームで地域のにぎわいを生む

 北谷ゲームコミュニティーデーは今回が3回目。参加者は60~80人の間を推移しており、顔が見える距離感でラフに行われている。好きなゲームを持ち込むスタイルはBYOC(Bring Your Own Compuer)と呼ばれ、参加者それぞれが自由にゲームを楽しみながら、その空気を会場にいる人たちと共有することができるのが特徴。

 会場のホテルはアメリカンビレッジ内に立地しているので、目の前に広がる海はもちろん、プレイの合間に徒歩移動で様々な北谷グルメも堪能できる(実際、新里さんはパンケーキとまぜ麺を会場付近でしっかり食し、SNSで発信していた)。こうした点でも、普段家でプレイするのとはひと味違った、ちょっとした非日常感を楽しめるのがこのイベントの特性だ。

 県内でeスポーツ振興に取り組み、今回のイベントをサポートする高津友彦さんは「インドアで楽しむのももちろん良いのですが、ゲーム好きのたくさんの人たちが街に出てくれば、そこににぎわいが生まれて新たな市場ができる可能性が大いにあると思います」と指摘する。

 プレイするゲームの種類にもよるが、eスポーツでは身体的な能力や性別、そして年齢などの差をある程度均すことが出来るので、文字通り老若男女が楽しめる。さらに、プレイするのも観戦するのも、10代に満たない子どもたちから20歳未満の子どもたちが非常に多いため、そうした若年層への訴求力を考慮した上でイベントを組んでいけば、県内のeスポーツシーンが一気に盛り上がる可能性も十分にある

「現在は20~30代が中心のコミュニティーですが、今後は小中学生たちにもたくさん参加してもらえるような形にしていくつもりです。子どもたちや若い人たちが集まって、好きなことをする場所を地域に確保して活用することで、その場のにぎわいの創出にもつなげていきたい。eスポーツの間口を広げていけば、それが可能だと考えています」(高津さん)

大盛りあがりのプレイヤーたちにつられて

 今回は、もともと新里さんがスマブラのコミュニティをメインにしてることもあって、プレイされたゲームはスマブラを中心に、『ストリートファイター6』『MARVEL VS. CAPCOM3』のほか、『ぷよぷよ』のコミュニティ「沖ぷよ同好会」によるぷよぷよブース、『ポケットモンスター』の新作『スカーレット・バイオレット』の同好会も参加。さらに、初心者も対象にしたポケモンカード交流会も行われた。

 参加者の中で数少ない女性プレイヤーの“もち”さんは、美ら組が定期的にゲームイベントを行っている会場のバーで店員として働いていた。「皆んなが本当に楽しそうに盛り上がってるのを見て、私もやりたい!って思って、3年前からイベントに参加しています」と語る。

 ゲームの腕が上達する楽しみもあるが、やはり1番の醍醐味は「仲良くなって、友だちができること」。シンプルな話ではあるが、参加者の間ではゲーム好きという共通性が大前提となっているため、少し交流すれば後はもう話が早い。つながりはゲーム外にも広がり、一緒に食事に行く仲になった人もいるという。「皆んな本当に優しくて、ゲームが好きで、居心地良い空間ですね」と微笑んだ。

 北谷ゲームコミュニティデーの次回第4回は10月22日に開催する予定。場所は今回同様ベッセルホテルで、参加費は1,000円(ただし、保護者やBYOC参加者は無料)。今後も毎月第4日曜に定期的に開催する予定だという。詳しい情報は新里さんのX(旧Twitter)で随時発信中。

■関連リンク
J-Snake(新里渉) Xアカウント
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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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