「なはーと×ジュンク堂書店那覇店」でコラボ 文化発信拠点で地域連携

 
ジュンク堂書店那覇店の特設コーナーを紹介するなはーとの林立騎さん(左)と同店店長の森本浩平さん

 那覇文化芸術劇場なはーとは、文化芸術を通じた協働によるまちづくりの一環として、ジュンク堂書店那覇店、リブロリウボウブックセンターと連携した取り組みを行うことを発表した。同店1階の壁面スペースには既に「なはーと×ジュンク堂」コラボレーションの特設コーナーが設けられており、なはーとの公演に関連した書籍が並べられている。
 なはーとの林立騎さんは「なはーとでの公演は“本”に関連する演目が非常に多いので、観劇だけでなく読書のきっかけにもつながるといいですね。移動をすることで那覇の街を見てもらいながら、文化芸術への関心を高めてもらいたいと思っています」と話し、文化発信への意欲を見せた。

文化芸術と地域とを接続する

特設コーナーには、なはーとでの上演作品や展示に関連する様々な書籍が並ぶ

 10月25日行われた会見で林さんは、同店を「文化発信拠点の先輩」とした上で、なはーとのあり方に触れながら「劇場の中だけでなく、地域を盛り上げていくこともミッションの1つ。地域連携がまだ十分ではないのが現状なので、今後の地域振興の1つの手法として取り組みたいです」と話した。

 今回のコラボは、なはーとにショップが無いことが1つのきっかけだった。同店の森本浩平店長は「劇場がオープンする前からショップが無いということを聞いていたので、何かできることはないかと考えていたんです」と振り返る。もともと沖映通りが文化の発信地で、コロナ前にも様々なイベントを催していたことにも触れ、「ジュンク堂、なはーと、そして沖映通りで連携して色々なことを展開していきたいと思っています」と話した。

「地域連携を深めるために文化拠点同士でつながるというのは、なはーとを運営する上でも優先的な項目でした」と林さん。「ショップが無いという短所を、人や地域のつながりに変えていく」として、「地域で協力した街中を舞台としたイベントなども企画していきたいです」と語った。

作品制作のきっかけにも

ジュンク堂書店那覇店で手に取った本が作品につながったという劇作家の神里雄大さん(中央)

 会見には10月28~30日の間、なはーとの小劇場で上演された演劇作品『イミグレ怪談』を手掛けた劇作家の神里雄大さんもゲストとして登壇し、ジュンク堂書店那覇店で出会った書籍が作品に直接つながったというエピソードを披露した。

「『ジュンク堂なら(在庫が)あるんじゃないか』という感じで、何となしに訪れたり、資料を見に来たりするんですよ。目的の本以外のたまたま入ってくる情報や、“ジャケ買い”を出来ることが書店の良さだと思います。実際、このお店で『面白そうだな』と手に取った本を読んだことで作品もできましたからね」

 ちなみに『イミグレ怪談』の劇中には、固有名詞こそ出てこないものの、ジュンク堂を思わせる書店が登場する。こうした波及効果を作品の中に見つけ出すことも、文化芸術を堪能する1つの楽しみだ。

アーティスト選書も展開予定

 「緑ヶ丘公園を抜けると、なはーとからジュンク堂まで歩いて2~3分の距離なので、両方を行き来すれば文化芸術の楽しみ方の幅が広がると思います」と森本店長。さらに「関連の本を見て購入することは、観劇の体験や思い出を“もの”として残すという意味でも良いんじゃないでしょうか」と強調した。

 林さんは「上演作を観た劇場で関連したものを買うことができたら便利だと思いますし、移動することで少し不便をかけるかもしれません」と前置きしつつ、「でも、少しの間でも地域を歩いてもらうことで、那覇の街を見て、知ることにつなげられればという思いもあります」と説明。その上で、那覇市が掲げる「『協働によるまちづくり』を盛り上げていきたいですね」と話した。

 ジュンク堂書店那覇店の特設コーナーは、なはーとでの上演作品の関連書籍を陳列するほか、今後は上演作の作家やアーティストによる選書を展開するなど、様々な角度での企画を予定している。

■関連リンク
「積極的にわけの分からないことをやる」なはーとで演劇『イミグレ怪談』 ‖ HUB沖縄
差別を考えるための“起爆剤”に 11月3日から『喜劇 人類館』 ‖ HUB沖縄
博覧会に内在する権力と欲望の眼差し なはーとで企画展「帝国の祭典」 ‖ HUB沖縄

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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