島の文化発信拠点「PALI GALLERY」 宮古島でアートに触れる機会を生み出す

 

 宮古島市の繁華街を歩いていると、そのど真ん中に突如コンクリート打ちっぱなしの建物が現れる。入り口に足を踏み入れると、コーヒーの良い香りが漂い、壁面に目をやると1枚1枚にエネルギーが満ち溢れる写真作品がディスプレイされている。
 宮古島市平良の下里にあるギャラリー「PALI GALLERY(パリギャラリー)」は、アートを軸に、飲食も含めた様々なカルチャーを発信する“島の文化拠点”として昨年5月にオープンした。「全国から文化に関わる人たちが集える場所、そして地元の人たちが気軽にアートに触れられる場所にしたいんです」。そう語る代表の松原洋輔さんは、島という限られたフィールドの中で土地の歴史や地元の人たちに向き合い、その文脈や気風の延長線上にある文化の伝播に奔走している。
 オープンから1年を迎える5月13日には宮古島唯一の映画館「パニパニシネマ」で、1日限定の映画上映イベントを開催する予定だ。

カルチャーの土壌を耕す

 ギャラリーの名称に冠した「PALI(パリ)」は、宮古島の言葉で「畑」を意味しており、文化的な土壌を耕していくというコンセプトを埋め込んでいる。
 現在宮古島には公営の美術館がなく、島の人たちが著名な作家やアーティストのアート作品に触れる機会がほとんどないと言わざるを得ないのが現状だ。それゆえ松原さんは「アートを鑑賞するということ自体のイメージや、ギャラリーが『どういう所なのかよく分からない』という人が多いと思います」と指摘する。

 そんな状況を踏まえて、アートに触れる機会としての「入り口は何でもいいし、多い方がいいんです」と松原さんは語る。ギャラリーの入り口にあるスタンドではコーヒーやスイーツも提供しており、コーヒーを買いにフラッと寄った地元客や観光客が作品を観ていくケースが多いという。

「作品の案内や解説を丁寧にすると、世界観に入り込んでくれる人たちもいます。鑑賞の仕方や楽しみ方も大事ですけど、やはりまずは機会をどんどん作っていかなければ先に進めない。まだまだその段階だと思います」

 これまでに地元の子どもたちをギャラリーに招待して作品を観てもらう「こどもギャラリー」も過去に開催した。余計な先入観を持たないうちにアート作品に触れられる機会があれば、子どもたちの自由な発想や感性は豊かになる。
 ただ、子どもたちがアートに行き着くためには保護者の理解や関心も必要になってくる。「アートは分からない」「芸術は難しい」という大人の先入観の切り崩しと、若年層や子どもたちへの波及が大きな課題だ。

「特に地元の若い世代にできるだけアートに触れられるカルチャーを浸透させるにはどうすればいいのか、という観点に重きを置いて企画を話し合っています。ゆくゆくは子どもたちが大人の手を引っ張って『あれ見に行こう』ってギャラリーに入っていくような雰囲気を作っていきたいですね

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