島の文化発信拠点「PALI GALLERY」 宮古島でアートに触れる機会を生み出す

 

1周年で特濃の特別イベント開催

 パリギャラリーの展示内容は、基本的に宮古島に関連付けたものを企画している。ディレクターには写真家の石川直樹さんと、宮古島出身のアーティスト・新城大地郎さんが名を連ねており、この2人の作品展も含めてこれまで宮古島を題材にした写真作品や、普段とは違う視点で宮古島のことを考える作品を展示してきた。

 5月21日までは、復帰前後の宮古島市(旧平良市、伊良部町)や大神島を撮影した勇崎哲史さん(1949-2021年)と石川竜一さんの2人写真展「みゃーく 好光」を開催している。石川さんが勇崎さんに師事していたこともあって、両者の作品を連なりで観ることで、シャッターを切った時間と空間の違いや、さらには時空間を超えて通ずるものとのコントラストが見えてくる。

 また、5月13日には石垣島出身の高嶺剛監督の『パラダイスビュー』(1985年)と『変魚路』(2016)、そして日本を代表する現代詩人・吉増剛造さんとオルタナティブロックバンド・空間現代の朗読ライブを捉えた『背 吉増剛造×空間現代』の3作品を上映する特別イベントが行われる。

 くらくらするような独特な世界観を詩的な映像で表現する高嶺監督作品は配信もなくDVD化もされておらず、現在スクリーンで観られる機会は貴重だと言っていい。吉増さんは1980年代以降から沖縄や奄美を訪れて作品を制作しており、宮古島の歴史や文化に触れた詩もある。

 当日は上映の合間に高嶺監督や吉増さんと石川竜一さんらのトークセッションも行われる予定で、映画作品についてはもちろん、宮古島を巡る表現者たちの話を聞くことができるとてつもなく濃厚な1日になりそうだ。

継承と共に創造を

 松原さんは宮古島でギャラリーを営むことについて、「色んな所にいるアーティストや文化に関わる人たちが、宮古島を目がけて訪れるという状況を作り出したいんです。パリギャラリーの存在を、その発端の1つにしたい」と意義付ける。
 宮古島は「宮古ブルー」と称される海の美しさが象徴的なリゾート地としての不動のイメージが確立しているが、土地の歴史や文化の豊穣性がフォーカスされることは多くはない。

 「第一線で活躍しているアーティストが急に宮古に集まり出したら、観光地とは違う文化的な文脈で注目されることもあると思うんですよ」と、今後の展望に触れる。「近くの外国・台湾との文化的な交流の機会も生まれる可能性だってあります。琉球王国時代のような交易文化にならって、色んな文化が交わることで新しく生まれることもあると思います」と続けて、「継承と創造」を併走させることの重要性を強調した。

 さらに、これまでの1年間を振り返って「色んな人が宮古島に来てくれるきっかけを少しずつ作れてきてはいると感じてます」と松原さん。一方で、上述したように「若い世代も含めて、集客という点ではまだまだ課題は山積みです」とも話す。「宮古の人や文化、そして土地の空気を感じられる場所として、宮古でしかできないたくさんのことを発信してきたいですね」

■関連リンク
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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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