県内中古マンション価格上昇額が全国一 りゅうぎん総研が分析
- 2020/12/30
- 経済
りゅうぎん総合研究所は、沖縄県内の中古マンション価格の推移と将来予測を分析した調査レポートを発表した。
70㎡換算価格での沖縄県の中古マンション価格推移が、2008年10月に1,530万円だったのが、2020年10月には3,185万円と倍増しており、全国でも顕著に上昇していることが明らかになった。好調な観光産業による県経済拡大、金利低下による民間投資の下支えが要因と分析している。
一方で、今後は県内中古マンションの平均築年数の高経年化が進むため、将来的に価格低下が予想されるとしている。また、不動産は流動性が低いため、価格変動が景気動向とタイムラグがあることも指摘し、新型コロナウイルスの感染拡大が今後の中古マンショ価格に与える影響も中止する必要性を示している。
維持管理・再生の取り組みが課題
国土交通省の推計では、全国の築40年以上のマンションは2018年末時点で81.4万戸、その10年後には倍増して198万戸、そして20年後には約4.5倍の367万戸に増加するとされる。これに伴い、建物の老朽化や管理者の人員不足などが顕著な高経年マンションも増えることが予想されるため、維持管理適正化や修繕などが困難なマンションの再生に向けた取り組みが喫緊の課題という。
ただ、建て替えや大規模修繕など、マンション管理に関わる重要な意思決定については、経済力や価値観が異なる複数の所有者の合意形成が困難で、具体的な課題解決に向けて動くハードルが高い。こうした背景から、今年6月には地方公共団体の役割強化を要点とした「マンション管理適正化法」「マンション建替円滑化法」の改正が成立した。
レポートでは、管理適正化推進計画を地方公共団体が策定し、管理計画を認定できることに注目しており「管理向上へのインセンティブとなり、マンション管理が適切に行われているのかを知る一つの物差しとなりえる。マンション管理状況を可視化することで、資産価値へ反映させられるのではないかと期待される」としている。
今後は価格低下傾向に
県内の中古マンション価格は12年間で倍増し、全国で最大の上昇額となった。首都圏では2015年ごろから2016年にかけて価格上昇がみられ、2017年以降は上昇率が鈍化して高止まりしている状態。沖縄県は2016年に大幅な上昇があり、翌2017年以降も上昇傾向が続いたが2020年には横ばいの状態となっている。
また、首都圏と沖縄県で2008年には約1,500万円あった価格差が、2020年には550万円程度に縮小している点も指摘している。
全国の都道府県の中古マンションの価格と平均築年数に基づいて、①標準的、②築年数経過に対して価格が下がりにくい、③築年数が短いが価格が低いという3つのグループ分けを行ったところ、沖縄県は2008年時点で①標準的なグループに属した。
2020年は全国的に平均築年数が長くなり、価格が上昇。さらに、各都道府県で築年数と価格がばらつき、地域差が広がる傾向になった。価格の上昇幅が全国最大だった沖縄は、2008年から2020年にかけて住宅需要によるマンション建設が相次いだ影響が反映されたことで平均築年数がほぼ変わっておらず「全国の標準的な目安から大きく乖離した」。
しかし一方で、沖縄は2020年時点でも①標準的なグループに区分されている上、今後は景気後退による住宅需要減退で新築物件が減少するため、築年数経過に伴って価格低下が見込まれるという。他に価格の上昇額が大きかった東京都や京都府は、首都圏の高人口密度地域、人気の観光地を抱える地域であることが共通しており、両者ともに②築年数経過に対して価格が下がりにくいグループに属している。
既存マンションの魅力向上を
こうした点を踏まえて、観光地である沖縄が高経年化に対して、高価格帯で価格を維持できるか、あるいはある程度の価格低下によって標準的なグループに留まるかどうかが今後の焦点になる。レポートでは「沖縄県は亜熱帯気候という他の都道府県にない特徴を持っており、観光地として人気の地域であることから、今後、一層居住地としての魅力に磨きをかけることが重要」と考察。
「沖縄県の中古マンション市場では、マンション新築ラッシュから既存マンションの魅力の向上へと焦点が移行しつつあるのではないかと考えられる」とまとめた。
また、投資の観点から、築年数経過に対して資産価値が下がりにくいマンションは投資用物件として重要な要素であり、資産価値を下げないための取り組みは経済活動の活発化、ひいては県経済の拡大にも寄与することを強調している。
さらに、今後の価格低下が見込まれる中で、地方公共団体による積極的な関与で、改正された関係法令を活用した管理・修繕のあり方などについての方向性を早急に議論する必要性を提起した。