ターミナル閉鎖の下地島空港 復活の道筋は?

 
下地島空港 沖縄ニュースサイト
下地島空港

 6月24日――白い胴体に黄色と青色の塗装が映えるB737-700の機体が、下地島空港に降り立つ。北海道を拠点とする航空会社のエア・ドゥは、2018年から自社機での実機訓練を下地島で行っていて、今年も6月24日からの3日間の訓練が予定されている。

 副操縦士を目指す4人のパイロットの卵たちが、滑走路に接地してはすぐに上昇する“タッチ&ゴー”の訓練を繰り返す。一見、着陸がうまくいかずやり直しているようにも見えるが、実際は「離陸、着陸の操作のポイントがぎゅっと詰まった効率的で効果的な訓練」(エアラインパイロット)なのだという。

 真っ青な空から現れた白い機体が、“下地ブルー”の海に吸い込まれるように、進入灯の桟橋に導かれて下地島空港17エンドに降りていく姿は、「青い水平線を いま駆け抜けてく」と謳いだす山下達郎のヒット曲そのものだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大で、全国的に県をまたぐ移動の自粛が求められる中、一時は訓練の延期も検討されたというが、大手と異なり、パイロットに人員の余裕がない中小エアラインでは計画通りにパイロットを養成しなければならないこともあり、訓練は予定通りの実施になる。

パイロット養成の訓練空港

 昨年3月に新ターミナルが開業した下地島空港。この空港にも新型コロナウイルスの感染拡大は大きな影響を及ぼしている。まずは、その下地島空港の歴史をざっと振り返ろう。

 1960年代、国策によりパイロット養成施設の整備が求められる中、宮古島や、伊良部島の住民の間で賛否が渦巻いた結果、1979年に開業したのがこの空港だ。以来、JALとANAがパイロットの実機訓練を繰り返し、1992年のピーク時には年間に2万8526回の訓練着陸回数を記録した。ジャンボ機も離着陸できる3000メートルの滑走路を備え、“タッチ&ゴーを間近で見られる観光スポット”として、地元はもちろん全国の航空ファンに知られる存在であることは周知の通りだ。

 ところが、シミュレータ―で代替できる訓練、海外で安価にできる訓練が増えたことでJALが2012年に、ANAが2014年にここでの訓練から撤退してしまい、海上保安庁などの実機訓練が散発的に行われるだけとなる。立派な滑走路とは裏腹に、閑散とした光景…ただただ垂れ流される年間の維持費4億円は、沖縄県が3億円を繰り入れて支えることになった。

開業1年で12万5000人

 危機感を募らせた沖縄県は、「空港及び周辺地域の利活用事業」の提案を募集。すると、空港ビジネスを立ち上げたばかりの三菱地所などが手を挙げ、事業を受託。おおさか維新の会が突如、米軍普天間飛行場の訓練の移転を提案するなど紆余曲折もあったが、去年3月末、豪華なリゾートホテルのような「みやこ下地島空港ターミナル」も開業し、LCCジェットスターの成田―下地島便が25年ぶりの定期便として実現した。

下地島空港ターミナル 沖縄ニュースネット
2019年3月開業の新ターミナル

 7月にはジェットスターの関西線、香港エクスプレスの香港線も就航。開業1周年の3月30日には利用客が想定をはるかに上回る12万5000人を達成したと発表。順調な滑り出しを見せた。

 訓練空港としても、滑走路の両端にILSを備えるなど装備も完璧で、ほかの民間空港より確実にスケジュールを確保できる下地島空港のメリットが改めて見直され、エア・ドゥのほか、バニラエア、JTA、キャセイパシフィック、ソラシドエアが続々と訓練飛行を実施するようになる。2018年度に1,413回だった着陸回数は、2019年度は2,283回に急増した。空港の未来は、前途洋々のはずだった。

空港「一時閉鎖」

 ところが、このコロナ禍である。香港エクスプレスが2月に香港線の運休を決め、ジェットスターは4月に成田線、関西線を運休、定期便がゼロとなり、ターミナルビルは同じ4月10日、全国で初めて「一時閉鎖」となってしまった。現在のところ、6月14日までの休館が決まっている。

 そうなると、頼みの綱は訓練フライトだ。下地島空港では“タッチ&ゴー”で、「滑走路に接地するたびに1回着陸」とカウントし、その都度、着陸料を徴収する仕組みになっている。冒頭のエア・ドゥのB737の重量(約70トン)の場合、1回接地するごとに約5万円の着陸料が発生する。1日10回程度の接地で、これを3日間実施すると150万円ほどの着陸料となる。

 ただ、もともと着陸料など使用料の合計は年間2,380万円あまりに過ぎない。一方、支出は草刈りや警備など業者に委託する管理費は7億1,200万円となる。この差額を沖縄県の一般会計からの繰入金などで帳尻を合わせている。

 18年3月に県が打ち出した空港の「財政の中期見通し」によると、今年度、着陸料などの空港使用料はおととしの2倍以上の3,600万円となる一方、繰入金は駐車場や構内道路整備などの建設が終わったことから3億5800万円減って、2億7400万円に圧縮される見通しだった。だが、「訓練の見直しの話も複数ある」(県関係者)とのことで、いま、目算は大きく狂っている。

 一方、10月にはスカイマークが羽田−下地島空港に就航を計画するなど、明るい材料もある。もとより下地島や橋でつながる宮古島の魅力が損なわれたわけでもなく、開業1年で見せた12万5000人の利用客はむしろ、その底力を見せたとも言える。新型コロナウイルスの感染の収束によって再びこの空港の賑わいが復活することが強く待たれる。

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