「分断しながらでも俺たちは生きていける」ASIAN KUNG-FU GENERATIONが3年半ぶりの沖縄公演 後藤正文さんインタビュー<前編>
- 2022/11/30
- エンタメ・スポーツ
今年3月にリリースされた新譜『プラネットフォークス』を引っさげて3年半ぶりに来沖したASIAN KUNG-FU GENERATION(アジカン)が、11月19日に文化芸術劇場なはーとでツアーファイナルとなるライブを行った。
結成25周年を迎えたバンドは、常に新しい挑戦をしながらも、“アジカンらしさ”という揺るぎない軸をますます太くしている。コロナ禍に突入して初の、久々となる沖縄でのライブは、新譜を中心に現在のアジカンのどっしりとした存在感を見せつけつつ、衝動と勢いが詰め込まれた新旧ロックナンバーでは客席を熱気に包み込んだ。
大盛況で幕を閉じた沖縄公演のライブ直前、フロントマンの後藤正文さん(Vo&G)が単独インタビューに応じてくれた。ツアーのこと、コロナ禍のこと、音楽と社会のこと、そして沖縄のこと。3年半前からは社会が大きく変わった、今現在の後藤さんの言葉を沖縄公演のライブ写真とともにお届けする。
「純潔性のストーリー」から解放されていく時代
――『プラネットフォークス』ツアーということで、各地を周って沖縄でファイナルを迎えるわけですけど、ライブを重ねてきてどんな変化や手応えを感じていますか。
「このアルバムのレコーディングに関して言えば、今まで以上にASIAN KUNG-FU GENERATIONというバンドを拡張した形で音楽を作ってきたっていうイメージだったんですね。ゲストがいっぱいいたりとか、プロデュースも人に委ねたりとか。バンドで作ってるけど、バンド周りの仲間たちとも一緒に作ってるみたいなイメージがあって、それがツアーをすることによってグッと身体性を高められてるというか、レコーディングだけの繋がりじゃなくて、コンサートの現場でも仲間たちとの繋がりを感じるようになってきています。
沖縄公演だったら、ビートのプロデュースで入ってくれたskillkillsのグルコネクトくんがサポートでステージに上がってくれることになったし、コーラスのAchicoさんはソロも含めて付き合いも長いですし。その意味ではバンドとはいえ「バンドって俺たち4人だけじゃ出来上がってないよな」ということをちゃんと実感するし、今はロックバンドのある種の“純潔性”みたいなストーリーから解放されていく時代だと思うから、それを体感できているというか。みんなコラボするのは当たり前になってきてますしね」
――色んな人たちが色んな人たちと色んなことやってますもんね。
「そうなんですよ。でも普通に社会とかで生きるってそういうことじゃないですか。色んな人と混じり合ってこその共同体だから。その意味では、ようやく「バンドメンバーだけやれよ」みたいな縛りみたいなものから逃れて、幸せに音楽を鳴らせているなという実感はありますね」
―2015年のアルバム『Wonder Future』ツアーの時にも沖縄でファイナルを迎えました。間に『ホームタウン』のツアーが挟まって、3年半ぶりの沖縄でツアーの締めですが、久々に沖縄に感じることはありますか。ライブはこれからですけれど。
「どうでしょうね。でもやっぱり特別な感じはありますよね、沖縄に来るっていうとね。東京から遠いってのもありますけど、色んな意味で東京的なものから離れられるような気持ちもあるから、ちょっと心を安らげます。こうやって冬に温かいところに来て、この怒涛の2年とか3年のことを考えると、ちょっと開放的な気持ちでこの空気を吸いたいなっていう気持ちはありますよね」
――前回とは世界レベルで状況は変わりましたからね。コロナ禍もウクライナも現在進行形ですし。
「ツアー前に戦争始まったしね。そういう意味で“緊張の周縁”にいるという感じはありますね。核心の部分の近くではないにしろ、物価が高くなったり、楽器とか機材の部品が手に入らなかったりとかそういう影響ももちろんありますし、なかなか物騒な時代が来てるなっていう感覚があります」