「国際通りを駅伝の聖地に」長距離競技育成に邁進 TASUKI RUNNING CLUB遠藤代表

 
TASUKI RUNNING CLUBの遠藤英典代表

 「国際通りを駅伝の聖地にしたいんですよ」。そう語るのは、沖縄県の長距離陸上競技の選手育成に日々励む、TASUKI RUNNING CLUBの遠藤英典代表だ。ことし2月には国際通りを走る小学生向けの大会「第1回国際通りジュニア駅伝大会」を開催。低学年の部・高学年の部を合わせて24チームが参加し、長距離種目の子どもたちにとって年に一度の大きな目標の場を作り出している。さらに近年では、「沖縄は暑くて長距離を走るのには向いていない」という定説が覆りつつある。実は沖縄の気候こそが長距離競技に有利だという。

北山高校での指導も

 遠藤代表はもともとぽっちゃり体型だったというが、失恋を機にダイエットを決意。その手段として選んだのが「走ること」だった。その後陸上にのめり込んでいた結果、全国高校駅伝では1区を走り、当時の福島県高校県記録を樹立。法政大学のメンバーとして出場した箱根駅伝では最高で総合6位を収めるなど、その実績は輝かしい。

 3年前から北山高校で陸上の外部コーチとして指導をしており、小学生向けには浦添市を拠点に週2回の教室を開いている。

実はランニングシューズが売れる沖縄

 沖縄県の児童生徒は、部活などで始めるスポーツとして野球やサッカー、バスケットボールなど球技のイメージが強く、陸上競技を選ぶ人はそれほど多くない。遠藤代表によると、高校総体の陸上競技の登録者数が、大阪(人口約880万人)は約1万人に対して、沖縄(同約150万人)は約600人。もともとの人口差を加味しても、やはり沖縄で陸上競技をする子は少ないと言える。

 陸上競技の指導者も大半が短距離など長距離以外の種目出身であるため、指導者そのものの不足も課題の一つだ。

 「国際通りジュニア駅伝大会」の開催には、こんな思いもある。

 「実は沖縄は、ランニングシューズがとても売れるらしいんですよ。それはNAHAマラソンがあるからランニング人口がとても多いんですけど、子どもたちにもそんな大会を作ってあげることが、陸上競技を始める一つのきっかけになるのかなと思っています。たくさんの人に走っている姿を見てもらったり『頑張れ』と応援してもらったりするのも大事なことです。それができるのが国際通りです」

「第1回国際通りジュニア駅伝大会」の様子(遠藤代表提供)

 これらの取り組みは、7月11日には「沖縄県の令和5年度『スポーツアイランド沖縄』形成に向けた付加価値構築支援補助金」に採択され、国際通りジュニア駅伝大会などの今後の開催に活用する予定だ。

「長距離は、走れば速くなる」

 「沖縄は暑くて長距離を走るのには向いていない」という定説が今では覆りつつある。

 遠藤代表はこう語る。

 「雪国では年の半分が雪で外を走れないこともあります。逆なんですよね。本当は雪国の方が不利なんですよ。北山高校では、あまり暑くない早朝に走って、午後は水泳トレーニングをしています。工夫次第でとてもいい練習ができています」

 沖縄県勢としては北山高校が2021年の全国高校駅伝で27位となるなど、“長距離後進県”とのレッテルを払拭する勢いを見せている。

 「特に長距離は、走れば速くなりますから」。かつてのぽっちゃり体型から全国トップレベルの陸上選手に躍り出た遠藤代表が、この言葉を裏付けている。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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