沖縄の“複雑性”をエンタメで届ける『連続ドラマW フェンス』19日に放送開始

 
『連続ドラマW フェンス』先行上映会に参加した沖縄出身キャスト

 沖縄で起こった米兵による性的暴行事件の真相を追うエンターテイメント・クライムサスペンス『連続ドラマW フェンス』が19日からWOWOWで放送される。2月13日、沖縄市の沖縄市民小劇場あしびなーで関係者を集めた特別先行上映会が開かれ、制作関係者と主演の脇を固める県出身のキャストらが登壇。作品の見どころや撮影の裏話などについて語った。
 プロデューサーを務めた宜野湾市普天間出身の高江洲義貴さん(WOWOW)は「沖縄の現実の複雑性を表現することにたくさんの人たちに協力してもらいました。この複雑性に向き合って、どう考えていくかという行為こそ(様々な問題の壁という意味での)“フェンス”を乗り越える何かにつながる。本作がそのきっかけになってくれたらいいなと思っています」と話した。

『連続ドラマW フェンス』プロモーション映像

野木亜紀子脚本で描く沖縄の今

 本島中部を主な舞台に設定し、米軍基地の存在を真っ向から取り上げる本作の脚本は、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』『アンナチュラル』などヒット作を手掛ける脚本家・野木亜紀子さん。そして、実力派俳優の松岡茉優さんと2015年にミス・ユニバース日本代表に選ばれた宮本エリアナさんの2人がW主演でバディを組む。

宮本エリアナさん演じる大嶺桜(左)と松岡茉優さん演じる小松綺絵(WOWOW提供)

 雑誌ライターの小松綺絵(松岡茉優)が、米兵による性的暴行事件について調べるために沖縄を訪れ、事件の被害者だという大嶺桜(宮本エリアナ)に接触する。繁華街での米兵への聞き込みや、沖縄県警からの情報を引き出しながら調査を進める中で、沖縄の複雑な事情が絡み合う現実に直面していく、というのが大枠のストーリーだ。

 プロデューサーは先述の高江洲さんと、報道記者として沖縄での勤務経験があるという北野拓さん(NHKエンタープライズ)だ。本土復帰50年のタイミングで沖縄をテーマとした作品を作りたいと考えていた北野さん。米軍関係者による犯罪を通して沖縄の現実を描くという企画を数年かけて練っており、高江洲さんと出会ったことで映像作品として結実したという。

作品への思いを語るプロデューサーの高江洲義貴さん(右)

 同じく沖縄を巡る作品制作への思いを抱いていた高江洲さんは「企画をもらった時には『ありがとう』という感謝の気持ちしかなかったですね」と振り返った。

県出身キャストは総勢50人超

 「沖縄のドラマで沖縄の言葉にリアリティを感じることはなかなか難しい。できるだけ当事者をキャスティングするという世界的な流れもあって、沖縄のドラマを片っ端から見て、ポテンシャルを感じる役者さんに声をかけました」。

 北野さんがこう語る通り、ボーイズグループ「JO1」の與那城奨さん、俳優の新垣結衣さんや比嘉奈菜子さん、佐久本宝さん、そして県内で活躍するタレントの山城智二さんや志ぃさーさん、ニッキーさんなどの名前が並んでおり、沖縄出身のキャストは総勢50人を超える。

 さらに、主題歌には本土復帰50年を迎えた2022年5月15日にリリースされたAwichの楽曲「TSUBASA feat. Yomi Jah」を起用。未だ複雑な社会的問題が多々あり、不条理な状況の沖縄という地で、子どもたちに向けて自分の生き方を見つけて羽ばたいてほしいというメッセージが込められた曲だ。加えて、劇中の音楽も沖縄出身・在住の若手ミュージシャンが手掛けた。

「地に足のついた沖縄が表現されている」

「誠実に沖縄のことを描いた」と話すプロデューサーの北野拓さん(右から2人目)

 先行上映会の舞台に登壇した志ぃさーさんは「ドキュメンタリーかと思えるほどの映像で、物語の中に今の沖縄の現実が落とし込まれています。沖縄がもっと全国に知られて、みんなで手を携えるようになれたらいいなと思います」と語った。
 同じく壇上に立った山城智二さんは「地に足のついた沖縄が表現されています。シビアな問題をエンタメとして描いているので、遠くにいる人たちにも届くのではないかと感じています」と期待を込めた。

 北野さんは「この作品が沖縄の人たちにどう受け止められるか、ということに心配もあります」としつつも、「取材も丁寧にして、誠実に沖縄のことを描いたつもりではあります。今この作品を届けることで、沖縄のことを考えるきっかけにしてもらいたい。最後まで見たら納得してもらえる作品になっているので、ぜひ見てほしい」と力を込めた。

 『連続ドラマW フェンス』(全5話)はWOWOWで3月19日午後10時から放送・配信開始で、第1話の放送は無料となっている。

■関連リンク
『連続ドラマW フェンス』(WOWOW WEBサイト)
野木亜紀子脚本「連続ドラマW フェンス」のプロデューサーが語る、ドラマの制作秘話と沖縄への想い(WOWOW WEB MAGAZINE)

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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