夜の街・那覇市松山でクラスター ごみから見えるコロナ対策

 
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 沖縄県の直近1週間の10万人当たりの新型コロナウイルス新規感染者数は、41・52人と、2位の東京の3倍近い数字で、12日連続で全国最多となった(12日現在)。

 なぜここまで一気に感染が拡大したのか。5月から68日間ゼロが続いたものの、7月に入って再発生し、下旬に一気に増えた要因には、アメリカの独立記念日と「GoTo トラベルキャンペーン」が挙げられる。

 米軍のローテーション期にあたり、殊に独立記念日の7月4日前後にビーチパーティーやロックコンサートが相次ぎ、参加した米軍人・軍属、日本人の間で感染が広がった。米国本土からの移動は日米地位協定の壁に阻まれ、感染者の情報を共有することすら難しい。

 一方、新型コロナウイルスで経営危機に瀕した観光業界を支援しようと、政府肝いりでしかも前倒しで強行したものの、本土からの観光客がウイルスを持ち込む結果となった。那覇空港と嘉手納飛行場。県にとってはまさに「前門の虎後門の狼」と言える。

「夜の街感染」は松山でも

 ある時期まで小池百合子都知事がしきりに強調した「夜の街感染」は、沖縄随一の繁華街である那覇市松山も例外ではなかった。

 その前に、沖縄タイムスの與那覇里子記者が独自に算出したデータによると、沖縄県はスナックやキャバクラなど「風俗1号営業」店舗数が東京、福岡に次いで全国3番目に多く、人口10万人当たりでは283店舗で、2位の鹿児島の128店舗の倍以上に飛びぬけて、全国一だという(沖縄タイムスプラス)。

 その松山で7月28日、クラスター(感染者集団)が発生した。県は松山で働く飲食店従業員ら2080人を対象にPCR検査を実施し、10~60代の男女86人が陽性だった。陽性率は4・1%。

閑散とした松山では無料案内所のドアも閉じられ営業していない

ごみ袋にラメ入りの衣装やピンヒール

 大箱のキャバクラやホストクラブなどが入るビルの脇道に出されたごみ袋の異様さに記者が気付いたのは、8月4日未明だった。運営会社のホームページで感染者が出たことを公表し休業を告知する大手風俗グループも、そのビルに入っていたのだ。そのグループはキャバクラ以外に芸能プロダクションやゴルフ場を経営していて、引退したビッグアーティストも所属していた。また本土の大手プロダクションとも提携関係にある。

 その店舗が出していたとすれば、ごみにウイルスが付着しているかもしれない。明るくなって見に行ってみると、ごみ袋はそのままだった。その日は那覇市の可燃ごみの収集日。市指定の有料袋ではなく薄い透明のポリ袋だ。ラメ入りの派手な衣装が透けて見える。別の袋には15㌢はあろうかというピンヒールのかかとが袋を突き破っている。踏まれると痛そうだ。

白いピンヒールが袋を突き破っている

 また別の口が半分開いた袋には「キャスト個人面談」のファイルが覗く。〈仕事にならないくらい飲みすぎないこと。痩せて、美意識を高める あゆ〉……。紛れもなくキャバ嬢のものに違いない。ごみを出していたのは本土の別の風俗グループで、ホテルのほかに高級レンタカーなども経営している店舗だった。感染者を出したキャバクラのものであれば、清掃員が感染する恐れもある。

 県の担当窓口である「沖縄県保健医療部 新型コロナウイルス感染症対策本部総括情報班」(統括情報班)に電話を掛けた。担当者は「関係部門と情報の共有はしてない」と言う。通報者の連絡先はおろか店舗の所在地さえ聞く気がないようだ。

 埒が明かないので那覇市清掃局に掛けてみた。こちらは親切そのものだった。「事業ごみとして出している可能性もあるので、所有者と連絡を取ってみます」。数時間後、記者の携帯に着信があった。「所有者と連絡が取れ、夕方までには撤収すると言っている。もしそれまで片付いてなければ、また連絡をください」。

忖度せずに必要な情報の共有を

 夕方にはすっかり撤去されていた。ごみを出した店舗から感染者が出たかどうかを確かめるため、再び統括情報班に電話を掛けてみた。公表をしないのが基本姿勢だという。ではなぜ前者の店舗は公表したのかを問うと、こう答えた。

「店舗のホームページを見たマスコミが嗅ぎつけて、『(店名を)出してもいいか』というので、店舗が公表しているならと了承した。保健所の感染症対策班と連携しているが、清掃局など他の機関との情報共有についても考えていく」

 確かに“嗅ぎつける”のが記者の仕事ではあるが、ひとさまから言われるのも妙ではある。それはともかく、感染者の急増で保健所も医療機関も逼迫し綱渡りの状態が続くなか、現場で働く職員にはただただ頭が下がる。

 統括情報班は、感染者を病院かホテル療養にするかのトリアージや、病院・ホテルとの調整、さらには感染者の搬送も手掛けるという。感染発生当初から保健所の任務が多すぎると言われていたが、その負担軽減に貢献しているのだ。

 統括情報班の司令塔を担う大城玲子保健医療部長は、かつて米軍普天間飛行場とキャンプ・ハンセンでクラスターが発生した際、感染者数の公表を迫る報道陣に「公表したいのはもちろんだが、できない」「酌み取っていただきた」と苦しい回答に終始。「誰に忖度しているのか。行政パーソンの矩を超えている」と一部で批判を受けた。

 医療崩壊の危機が迫るなか、忖度をせず必要な情報は共有する。その上で「県民の“命どぅ宝”ファースト」で難局に当たってほしい。

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友寄 貞丸

友寄 貞丸

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伊江村出身。1990年から主に中国、台湾の取材執筆活動を続ける。2014年11月Uターン。著書に『雲南哀楽紀行』(愛育社)など。国境を越えても一線を越えない旅と取材を信条とする。

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