沖縄の「子どもの貧困問題」の背景とは これまでの対策を振り返る

 
島尻安伊子氏

 2013年に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が成立し、15年には全国で貧困対策の計画策定作業が動き出した。こうした中で沖縄県も県内調査を実施し、16年に発表した「子どもの貧困率」29.9%。全国平均の16.3%を大きく上回る深刻な数字を受け、「子どもの貧困」は一気に最優先の社会課題として取り上げられた。現在は16年に策定された「沖縄県子どもの貧困対策計画」の次期計画が議論されている。

 子どもの貧困対策が本格化し始めた時期、2015年に沖縄振興担当大臣を務めて貧困問題に取り組んだ島尻安伊子衆議院議員に、当時の状況や沖縄特有の背景などについて聞いた。

何から始めていいか分からない状態

 ―沖縄の子どもの貧困率が突出して高いとう数字が出て全国的にも大々的に取り上げられましたね。2015年に担当相をしていた頃、肝入りで貧困対策に取り組んだ当初はどんな雰囲気でしたか

「対策についての事業を立ち上げた当初はほとんど“手付かず”の状態で、全国的な調査が終わった頃でした。政府としても本格的に対策を打ち出さないといけという時期だったと思います。ただ、沖縄の子どもの貧困の社会背景が違うということは個人的にも以前から考えていて、そこでタイミング良く大臣を拝命したので沖縄の状況に特化した貧困対策事を立ち上げることにしました。

 それまでも現場のNPOの皆さんとも話し合って進めていたのですが、正直最初は問題が大きすぎるのもあって何から始めていいかも分からない状況でした。地元の貧困問題に取り組む団体とのブリーフィングを重ねながら叩き台を固めていきました。また、全市町村の首長にも集まってもらって、県全体での取り組むための意思統一もしましたね

 ―沖縄の社会的背景の違いとはどんなことでしょう

「家庭の所得の格差がもちろんあります。進学したいけど諦めるとか、ランドセルを買ってもらえないとか、そういったこともありますが、沖縄の場合は育児放棄が背景にあるパターンが多いんです。

 所得が全国的にも低く、離婚率も高い。特にシングルマザーは夜の仕事をする人が多く、夜の子どもの居場所がないと育児放棄の状態に陥りやすいし、そこからさらに非行につながるケースが多くなります。

 子どもをきちんと育てる能力や環境がない若い親が子どもを産んでしまうといういわゆる“負の連鎖”がありました。これは今もなくなっているわけではありません。その連鎖を断ち切らないといけないのが沖縄の大きな課題ですよね。

 私も4人の子どもを育てていたので、色んな場面で『何かがおかしい』と思うことも当然ありました。冬なのに半袖のTシャツだけの子やお風呂に入っていない子などは、明らかに分かります。

 那覇市議をしていた時には、業務をこなす中で夜間保育の大事さも身に染みてわかりました。その時には『子どもを迎えに来ない親が出てきたらどうするんですか』という有り得ない議論が現実に出たこともあって、これは子どもたちのためにも、大人の認識を変えるためにも何か手を打たないとと多いましたね」

やればやるほど出てくる現実

 ―島尻さんが携わっていた時期には「子どもの貧困」という括りで一定期間キャンペーンのように報道にも出て、行政が絡んだ支援の動きも活発化しました。現在次期計画が議論されていますが、これまでの推移を見てどのように感じていますか

「それまでの一般的な認識として『まさかそんな貧しい思いをしている子どもがいるなんて』ということっだったと思うんですが、実際に目の前に困窮している子どもがいる、という現実については多くの人たちに分かってもらえたんじゃないかなとは思っています。いわゆる社会問題に昇華して、寄付の動きとかも出てきました。

 そのことで困っている子どもたちが全員救われたわけではないですが、でも0から1にはなったと考えています。今日やったから明日すぐ良くなるという類のものでもない。むしろ、やればやるほど色んなケースが出てくる現実を目の当たりにしたのがこの5~6年だったんじゃないかなと思います」

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