「観光客は戻っても売上は戻っていない」 苦境続く観光業界の不満噴出
- 2022/11/3
- 経済
足りない人手…「今年いっぱいには限界がくる」
次いで話題に登ったのは、観光業界からの人離れや外国人労働者受け入れ、さらには物価高と賃金とのミスマッチも含めた人材不足・確保についての問題だった。
「人材不足は非常に深刻です」と切り出した沖縄県ホテル旅館生活衛生同業組合の宮里一郎理事長。ホテルの単価は比較的良い状況で稼働している一方で、「全ての従業員の色々な箇所に残業をお願いして、何とかやっと回している」のが現状だという。
「このままでは職員に訴えられるのではないか、という懸念もありますし、1度離れた人は戻ってこないので給料を上げてでもつなぎとめたいとは思っていますが、今年いっぱいには限界がくるでしょう」
沖縄リゾートウエディング協会の翁長由佳代表理事は「夏場にかつてないピークを迎えて、これまで以上の実績を打ち立てるような流れが秋に入っても続くことが予想されますが、一方で現場は疲弊しています」と述べた。労働の長時間化とマルチタスクなどの複雑化を余儀なくされている現場の従業員からは、観光関係の仕事について「給料に見合わない」との声が多く聞こえてきていることにも言及した。
飲食の現場も例外ではなく、人手不足に加えて物価高による原価値上がりも経営に直撃している。沖縄観光飲食業の会の与儀哲治代表は「人がいなくて客席を減らさざるを得ず、通常通りのキャパがとれないので、売上も上がりませんし、利幅は狭まっています」と窮状を説明する。
また、「アクリル板の設置がどれだけ感染予防になっているのか」との疑義を呈して、これまで実施されてきた飲食の場での感染対策についての検証も要望。従業員と客席を十分に確保する手立てを見つけ出さなければ、「これまで通りの利益を上げられない」と訴えた。
最前線にいる若年層への聞き取りを
このほか、将来的な人材確保について「新卒の雇用に関して、観光業界に従事してくれる大学や専門学校の学生の奨学金助成や、観光業に携わる人材を育成する学校・学科などへの助成などにも県に取り組んでもらいたい」(與座支部長)という要望も出た。
また、東武トップツアーズ株式会社沖縄支店の岡本直樹支店長は「今の状況下で最も心配しているのは、旅行者の方々が『また沖縄に来てくれるのか』ということです」と話し、受け入れ体制が十分に整っていない状態でリピーターを獲得できるかどうかへの懸念を示した。
加えて「観光産業の最前線で働いている20代の人たちをこの場に呼んで、話し合って意見を聞くことで見えてくるものがあると思います」と、若年層からの聞き取りを提案した。
各団体の代表者たちから挙げられた人材不足や経営支援などについての意見を聞いた上で、下地会長は「観光客が戻ってはいても、観光業界の経営はまだ十分に戻っていないということを明確に示して、県や政府に支援を要請していきたいと考えています」と述べた。
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