沖縄でできたワインのパイン!完成の秘訣は「人口的な冬」

 

 名護パイナップルワイナリー(沖縄県名護市)で作られている、パインワインの数々。赤でも白でもない、果実由来の美しい黄金色が目を惹く。本来、醸造は寒冷地域が適しており沖縄では不向きだったが、冷却技術の進化によってパイナップルを使用した醸造酒作りが可能になり、2016年から商品化されている。「沖縄の文化になり得る、新しい種類のお酒を作っています」と話す、畑(ハタ)工場長の想いとは。

醸造酒と蒸留酒の基礎知識

 世界を見渡すと、土地に息づくお酒というのは、一般的に地場の作物が原料となり、気候に適した製造方法で作られる。

 これから話を進める前に、「醸造酒」と「蒸留酒」について示しておきたい。

 「醸造酒」は、その原料が持つ”糖”を利用して酵母がアルコール発酵をして作られる。ワイン、日本酒、ビールなどがそれにあたる。
 「蒸留酒」は、醸造酒を熱して気化したアルコール分を集めて冷却、液体に戻すことで作られる。アルコールの沸点は約78℃と水より低いため、濃縮して度数を高めることもできる。泡盛・焼酎などがこれにあたる。ちなみに、ワインを蒸留したものがブランデーで、ビールを蒸留したものがウイスキーである。

ワインの醸造が上手くいく条件

工場長の畑さん(名護パイナップルパーク内ワイン館にて)

 醸造酒であるパイナップルワインを生産する、名護パイナップルワイナリー工場長の畑さんは、こう話す。

「原理的には、果汁を置いておくと自然界にある酵母の働きで勝手に醸造酒はできるんです。その中でたまたま美味しかったブドウのお酒が脈々と飲み伝わり『ワイン』という名称を授けられたんです」

 この‘脈々飲み伝わる美味しい醸造酒’が出来るのには、ある条件があるという。

「原料がアルコール発酵する時に熱を出して温度が上昇します。この熱を下げることで、微生物の活動が抑えられ、ゆるやかに発酵がすすみ、おいしいお酒ができるんです。ワインは海外だとヨーロッパ、日本酒は北陸から東北地方の秋から冬に寒くなる寒冷地域が昔から有名産地ですよね。一方、暑い地域では急激に発酵が進み、あまり美味しくない醸造酒になってしまいます。気温の高い自然環境下では、発酵を通り越して、腐敗することもしばしばです

 このことから考えると、亜熱帯気候である沖縄は本来、醸造酒作りに全く向いていないことがお分かり頂けただろうか。

名護パイナップルワイナリーの挑戦

 本来、ワインとはブドウから作られた醸造酒を指すが、ここでは「ワイン=果実酒」という広義から、パイナップルから作られていても「パイナップルワイン」と呼ぶことにする。

 名護パイナップルワイナリーでは、約30年前からワイン作りの試行錯誤を重ねてきた。

NagoPineappleGroupsのYouTubeチャンネルより

 畑工場長は、長年県外のワイナリーでワインの製造に関わり、コンサルタントとしても手腕を奮った。その当時の取引先の一つだった名護パイナップルワイナリーからラブコールを受け、現在に至る。

「全国のワイナリーを見渡しても、あくまで製造のメインはワインで、ブドウ以外の果物で作る醸造酒はサイドになるのですが『ここはパイン1種類でやり切ろうとしている!』と驚きました」

 パイナップルは醸造の原料としても適しているという。

「(白ワインの原料となるブドウ品種の)シャルドネ果汁の風味や芳醇さの評価基準のひとつに『パインの香り』というものがあります。シャルドネ品種が熟して、パインの香りが出てくるといいワインが期待できるんです。ということはですよ、パイナップルの醸造酒は確かに美味しいはずなのでは!?

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