那覇最古の居酒屋「民芸酒場 おもろ」が確かに“実在”するうちに 女優・柴田千紘の沖縄めぐり

 

 旅を愛する女優・柴田千紘さんに、沖縄リピーターの立場で見た沖縄を素直な視点で描いてもらう紀行日記。今回は柴田さん行きつけの知る人ぞ知る居酒屋の話。沖縄の芸能にも縁が深く、歴史もあるこのお店で飲むお酒はどんな味なのでしょう。


 

 はいさい!
 気づけば沖縄にいる柴田千紘です。

 今回沖縄にいた1ヶ月弱の日々も皆勤賞で毎日飲んでいたお酒好きでもある私なんですが、感受性の強い知人や、せんべろの賑やかな居酒屋しか知らない若い子にも薦めたくなる大好きなお店が那覇の国際通りから少し入ったところにあります。

 屋台村を青島食堂のほうに出て左にいくとボロボロ…といったら悪いけど明らかに周りとは違う建物で、営業中はぼやぁっと看板が灯る「おもろ」がそのお店。

「おもろ」の外観

 それは本当に魔法のように、狸に化かされたように、神隠しにあったように、、、ピントが合った人にしか見つからないような不思議な佇まいであります。
 ここって、あったりなかったりする小道の駄菓子屋やトンネルみたいな、昔見たファンタジーの導入に似た魔力がある気がしてならないのですが、今はちゃんとGoogleマップで検索しても出てくるので多分毎日存在しています。

 この「おもろ」、近いうちに立ち退きでなくなってしまうらしいのです

 来年には本当に探しても見つからない幻になっているかもしれない。今のマスターのおじいちゃんにあたる新垣盛市(あらかきせいいち)さんが「民芸酒場 おもろ」を創業したのは1953年のこと。

 沖縄の言葉で「想い/想う」を意味する「おもろ」の名付け親は南風原朝光(はえばるちょうこう)さん。最初は5人入ったら満席みたいな小さな場所でやっていて10年ほどして今の場所に移ったそうです。

 新垣さんと親交のあった人間国宝と言われる陶芸家や詩人が通い、その取り巻き、そして新聞記者や経済の人たちもそこに集まってくる…といった感じで輪ができていたようです。トップの人間たちが集い、その人間が持ってきて置いていく絵や詩や焼き物が集まり、今のお宝の博物館のようなおもろの歴史が刻まれていきました。

カウンターに濱田庄司夫妻とバーナードリーチ夫妻、後ろに大嶺 政寛(画家)、おもろ店主、新垣栄三郎(陶芸家)

 ちなみにおじいちゃんは凧作りの名人だったらしい!その凧もおもろのカウンターで飲んでると見つけることができます。

お宝がずらり。好きな人はこれを眺めてるだけでお酒が進むことでしょう

 カウンターに座ると目の前の布に書いてある詩はこの時代ここに集まる人達が「雲の上の存在」と口を揃えた有名詩人の山之口漠さんが書いたもの。

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