市場内で4mのクジラが泳ぐ!?水中写真家・鍵井靖章さん壁面展示

 

 12月下旬から4月頃まで、沖縄の海域ではザトウクジラを見ることができる。座間味村や本部町などではホエールウオッチングツアーなど観光資源としても有名だ。そんなザトウクジラ、実は沖縄本島最南端・糸満沖でも見ることができることを知っているだろうか。

 3月18日から6月頃まで、糸満市場いとま~る館内で「糸満ザトウクジラ展」(いとま~る商店会主催)が開催されている。館内の大きな壁に、全長4mのザトウクジラの写真2頭と世界の海で撮影されたウミガメやクマノミなどの写真を、まるで泳いでいるかのように展示。撮影したのは世界でも活躍する水中写真家、鍵井靖章さん(51)=神奈川県=だ。これまでも全国各地で写真の壁面展示を行ってきた鍵井さん。今回展示されている4mのザトウクジラの写真はこれまでの展示の中でも国内最大級となる。

世界の海を見た写真家が伝える沖縄の海

 鍵井さんは1998年からフリーランスフォトグラファーとして活動。2013年、2015年には日経ナショナルジオグラフィック優秀賞受賞など多数の受賞歴を持つ。鍵井さんが心掛けているのは、自然のリズムに寄り添いながら生き物にストレスを与えない撮影スタイルだ。2011年の東日本大震災をきっかけに海が本来持つ美しさを伝え残したいと考え、1年のうち約半分を海に潜り撮影を続けて11年になる。

 世界中で撮影を行う中でも、新型コロナウイルスの世界的流行以降は2か月に一回沖縄の海でも撮影をしている。鍵井さんは沖縄の海の魅力を「魚の群れであれば世界の海はすごいですが、慶良間の白い砂浜に青い魚が泳ぐ光景などは沖縄が世界に誇れる海中景色だと思います」と語る。

 沖縄の海では冬になるとザトウクジラが舞い、5~6月には稚魚で海中が溢れる風景に季節を感じることができるそうだ。

どんなところも水族館

 鍵井さんは撮影した海の生き物たちをシールにし壁に展示した「水族館」を全国各地で行っている。老人施設やデパート、学校など壁があればさまざまな場所に作ってきた。

 そんな鍵井さんに、糸満ダイビングサービスかりゆしの大山貴弘さんから「糸満市場にも作ってほしい」と依頼があった。糸満ダイビングサービスかりゆしは糸満発で唯一ホエール船を出しており、鍵井さんもお世話になっていたことがきっかけで話は進んでいった。

 準備期間は1か月間。2022年2月糸満沖でザトウクジラの撮影をし、3月17日糸満ダイビング協会会員約10名と共に設営を行った。「糸満市に観光名所を1つ作る気持ちで制作しました」。そう鍵井さんは言いながら、糸満ダイビングサービスかりゆしのスタッフと目を合わせ微笑んだ。

市場でやる意味

 地元客が集まる地元の公設市場で展示する意義を、鍵井さんはどのように感じているのか。「いとま~るでやることで、糸満沖にザトウクジラなどいろんな生き物がいることを地域の人たちにも知ってほしい」と語る鍵井さん。実際に糸満に住む筆者自身も、ザトウクジラが糸満沖で見られることを今回初めて知った。

 糸満だけではなく、沖縄の海はその美しさ以上に潜りやすさ、アクセスのしやすさなどバランスが取れていることも魅力の一つ。サンゴ礁など海の豊かさが生活圏内にあることは世界でも珍しいと言う。

「僕が水中写真家になるきっかけが20歳の頃、師匠が撮った海の写真を目にしたことでした。今回の写真展がきっかけで子どもたちが将来海に関わる活動をしてくれると嬉しいです」

 今回の「糸満ザトウクジラ展」は国内最大級のザトウクジラの写真や、生き物たちの珍しさや美しさだけでなく、写真を通してその奥に広がる海の豊かさを伝えている。

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