南西諸島・与那国でM8規模の巨大地震の可能性 政府調査委が長期評価発表

 
地震調査委員会が長期評価した地震発生域の対象領域地図(同委員会発表資料より、以下の図表も同じ)

 政府の地震調査委員会が3月25日、南西諸島周辺での海溝型地震に関する長期評価の第2版を公表した。発表資料では、確率は不明だが今後南西諸島・与那国島周辺でマグニチュード(M)8規模の巨大地震が新たに発生する可能性を指摘した。加えて、今後30年以内にM7~7.5規模の地震が与那国島周辺で発生する確率が90%以上であることも述べられている。

M7規模、与那国で8.6年に1回ペース

 2004年に発表された初版の評価に、最新の知見から評価対象の範囲や地震の規模などについて再評価を行って第2版とした。今回は日向灘や南西諸島・与那国島周辺の巨大地震発生の可能性や、1771年の八重山地震津波についても津波堆積物の知見を踏まえて不確実性も検討の上で内容を改訂した。

 第2版の南西諸島海溝周辺の地震活動の評価では、同海溝沿いを震源域とするM8規模の「巨大地震」が1911年(喜界島地震、M8.0)に1度だけ発生していることから、領域内のどこでも同規模の地震が発生する可能性は指摘しつつも、発生頻度が明確に示せないため確率は「不明」としている。

 M7~7.5規模の「ひとまわり小さい地震」については、与那国島周辺で1919年以降の103年間に12回発生(8.6年に1回の頻度)していることなどを踏まえて、今後30年以内の地震発生確率は90%と試算。

 南西諸島の同規模地震は1919年以降に4回発生しているが、この領域で細分化できる知見がないため将来の発生確率は不明としている。

今後30年以内の地震発生確率

南海トラフ地震予想の知見は「不十分」

 今回の改訂では、1771年に発生した八重山地震津波(M7.4)の事例が挙げられた。この地震ではM7.4という規模からすれば巨大と言える最大約30mもの高さの津波が発生しており、多数の死傷者が出た経緯がある(東日本大震災はM9.0で、津波の高さは最大約40m)。

 津波によって陸上に打ち上げられた「津波石」をはじめとする津波堆積物を調査した結果、先島諸島では過去2,000年間に八重山地震津波と同規模以上の津波が少なくとも3回発生していることが明らかになったという。さらに、八重山地震津波よりも小規模の津波を含めると、より高い頻度で津波が発生していることも指摘された。

 八重山地震津波の原因に関しては、地震に伴う海底地すべりや津波地震、分岐断層の活動など諸説あるが現時点で結論は出ていない。ちなみにこのタイプの津波によるものと思われる堆積物は、現時点で確認できるのは先島諸島のみだという。

 委員会は今後に向けて、南西諸島海溝周辺の津波石だけでなく、深海底堆積物や隆起痕跡、歴史記録など過去の大地震の痕跡を網羅的に収集した上で、そうした資料に基づいて「地震像の解明を進めることが重要」と説明している。

 南西諸島海溝周辺が他の海域に比べて観測点の数や配置に「困難さを抱えている」ことも指摘し、これまでの調査・観測に不確実性を反映させた確率計算手法の導入と自身の多様性を考慮した物理モデル構築の必要性も記した。

 さらに、南海トラフから南西諸島海溝全域にわたるプレート間地震や、双方が連動する超巨大地震について、長期評価のために必要な化学的知見の収集と整理が「現時点では不十分」であると判断。これを受けて、上記の地震は今後新たな知見やデータを収集・整理した上で評価可能に至った時点で評価を実施する方針を示している。

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真栄城 潤一

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1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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