那覇最古の居酒屋「民芸酒場 おもろ」が確かに“実在”するうちに 女優・柴田千紘の沖縄めぐり
- 2021/11/28
- 食・観光
那覇にはかつて「沖縄ジァンジァン」という小劇場があって、大物アーティストが多数出演していたのだけど、おじいちゃんはその箱の社長とも仲が良くてステージ後の出演者たちもよくこの場所で飲んでいたらしい。
当時のスケジュールなどもクリアファイルにとってあって見せてもらえた。ここにも名前が載っている新良幸人さんはちょうど先日も桜坂劇場で「一合瓶ライブ」をやっていて、私も見に行っていたんですが、民謡ファンに「ジァンジァン」のことを話すと「お前はおじいか!なんでそんな名前を知ってる!」と笑われました。
那覇で過ごした人なら誰もが知っている場所だったみたい。今あればまた観光客のツアーに組み込まれたりもして定番の人気スポットだろうなと思うのにこちらももうないんですね。
ここでまたひとつ面白い繋がりが、いつもおもろの壁に飾ってあって何度も目に入っていた矢野顕子さんの雑誌のページ。
おもろの中の座敷と表で撮られている写真なんですが、実はこの写真を撮ったのは、私が今年このHUB沖縄で流しのミュージシャンとしてインタビューさせてもらったこともあるお友達のやちむんさんでした!(やちむんさんがお友達って言ってくれるから私もそう書きます)
やちむんさんがミュージシャンとして今の活動を始める前にカメラマンと記者の仕事をしていたのは知っていたけど、私が好きな居酒屋で見ている写真も撮っていたたとは。本人も飾られてることを知らずに驚いていました。
そんなこんなで芸能とも深く結びつきながらきっといろんな面白い話が生まれて染み込んできた民芸酒場。
矢野顕子さんも今年「おもろで飲む泡盛が一番美味しかった」とツイートしていたし、おすぎさんピーコさんもよく来ていた、と常連客も言ってました。皆さんジァンジァン繋がりでしょうか。
最近だとキングコングの西野亮廣さんも、おそらく酔っ払ってふらっと見つけて店も面白い店主も好きになっちゃって、立ち退きになると知ると「もったいない!買いたい!」と言ったほど「おもろ」に魅了された1人なんです。
おじいちゃんの世代から派手な取材を断り続けて、今でもテレビの取材のお願いも多いだろうけど受けずに観光客でごったがえすようなことを拒んでいる。
なにかの縁で繋がって通っている常連さんか、それこそ神隠しみたいにどういうわけか辿り着いてふらっと入った人か… 。私はもう何年も前に後者の方で、気になる小道を適当に歩いて一人でハシゴ酒していた日の、かなり深い時間に迷い込んだような感じだったと思います。
その時はまだ今のマスターのお父さんが店に立っていて、私はひどく酔っ払っていたので今の「おもろ」ともまた違った薄灯の本当に怪しい赤い部屋に入ったような記憶がぼんやりあります。そしてそのぼんやりした映像の中に薪や、椅子や、階段やポスターの、いろいろな古い物がスポットライトを浴びてるようなイメージが断片的に残っていて、そこにいた店主も酔っ払いで面白く個性的だった気がする。
そのことを話すと今のマスターも奥さんも「それが父だ」と言うからきっと夢ではない。
そのあとしばらくは名前や場所を覚えていなかったので思い出が遠ざかっていました。本当にここ数年で、たまたま友人に勧められたので行ってみたら、今の店主さん達に替わっていたものの、もう夢になりかけていたあの場所だったのです。
その友人もたまたま近くのホテルに泊まっていたときにふらっと入ったようなので導かれたのでしょうか。そんなしっぽりとやっているのに、飲み屋さんとしては私なんかがふらっと行けるほど安くて心配になるほどです。