沖縄観光の復興「道半ば」 OCVB下地芳郎会長 新春インタビュー①

 

 「観光立県」を掲げる沖縄県。新型コロナウイルス感染症の影響によって大打撃を受け続けて年が明けて3年が経とうとしている。様々な支援策が施されてきたが、観光産業の根本的な問題解決の領域まで踏み込んだ施策はほぼ皆無と言わざるを得ないのが現状だ。
 昨年の下半期からは行動制限などもなく、観光客は徐々に増えて回復基調になり、年末年始にはかなりの人手があった。しかし、観光業界からは「客は戻っても売上は戻っていない」という声も多数出ており、受け入れ側の人材不足を筆頭に課題は山積したままとなっている。

 こうした沖縄観光の状況を踏まえ、2022年の振り返りと23年の展望について沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)の下地芳郎会長に話を聞いた。前編となる今回は昨年の状況を回顧しつつ、人手不足の深刻化、沖縄観光業界への公的な支援などについて話が及んだ。


 ―コロナ禍になって3年になろうとしています。観光業界に限らずですが、かなり厳しい状況が続いています。2022年を振り返ってどう感じますか?

「当初はそこまで長引くとは誰も考えてなかったと思うんですけども、コロナはもう我々がかつて経験したことのない大きな影響を世界経済全体に及ぼしています。沖縄観光に関しては20年、21年ときて、22年はゴールデンウィークや夏休みに行動制限がなかったということもあって、『3年ぶり』という表現がよく使われていた印象です。この時期は沖縄にとって非常に大事なシーズンですし、過去2年に比べると観光客数は着実に増加してきましたので、回復をたどっていると見ています。

 10月以降は全国旅行支援の効果も出ていますし、国際線の再開もようやく10月の中旬から始まった。全体として考えると、国内・国際観光、そしてクルーズについても着実に回復傾向にあると考えています。ただ、気持ちとしてはまだ「道半ば」という感覚なんですよ。これまでの観光客の減少の時は、需要が回復すれば沖縄観光が非常に強いということで危機を乗り越えていきましたけども、新型コロナは長期に及んでいることもあって、単に「観光客数が回復したからもう大丈夫」だということにはなっていません

 観光客数が増加して需要も回復傾向は見えてきたけども、一方で観光を支える観光業界、経営は依然として苦しい状況が続いている。やはりそこが安心感が持てるような状況にならないと本格的に沖縄観光は復興したとは言えない。加えて、来年にも影響がある不安材料として電気料金の値上げの問題だったり、深刻な人手不足、そして事業者の人たちにとってはコロナ禍での借り入れの返済という要素があるわけです。ですから、観光客数が大幅に大幅に増えてきたというのは嬉しい気持ちもありつつ、やはり道半ばというところですね」

 ―観光関連の事業者からは「人手不足」という声がかなり上がっています。観光客が戻ってきたことに加えて国際線やクルーズも含めたインバウンド再開の話もありましたが、観光地としての受け入れ体制の問題について考えざるを得ません。これまでの公的な支援や補助で足りなかった部分、あるいはこれからどんなことが必要なのかという点についてお聞きしたいです。

「この問題はまず、なぜ人手不足になったかということから考えなければなりません。観光に関しては行動制限があったし、人との接触が容易でなくなってしまった。2020年からのこの流れというのは今までとは違う日常が求められてきたことが大きいと思います。そこで旅行が“不要不急”という言葉の代名詞みたいになってしまったのが残念でした。結果として、コロナが長期化することで観光という産業が非常に不安定な職業だと位置づけられてしまったんですよね

 政府の支援策の雇用調整助成金というのは、短期で終わるんであれば非常に効果的だったと思うんですけども、長期化すると仕事を休む期間にモチベーションも変わってきます。それで別の仕事の方が安定的だと判断した人も多かったと思うんですよね。そうした流れがあって、バスやタクシーとかホテルも含め、観光業界の多くの分野で人手不足になってしまった。

 ですから、人手不足対策の大枠としてまずは観光が沖縄で今後も非常に重要な産業として位置づけられるという意味で、観光の信頼を取り戻す必要がある。今はちょうどその道の半ばです」

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