ファンの青春も“大復活”させた「沖縄アクターズスクール大復活祭」ライブレポ

 
「U.S.A」の振付は、会場全体が当然のようにやってました(沖縄アクターズスクール大復活祭実行委員会)

DA PUMPとMAXの説得力と盤石さ

 ざわめきが収まりきらない中、そのままDA PUMPの出番に突入。暗転の会場に「Feelin’ Good~」というISSAの歌い出しが響き渡ると、爆発的に大歓声が沸き起こる。会場を陽気でポップな空気に一変させるISSAの声は、デビュー時よりもフレッシュで華やかな高音域に達しているように思える。

 ステージ袖から他のアーティストを見守っていたというISSAは「ステージにみんなの思いがどんどん重なって、素晴らしい空間になっている」と感慨深そうに語ると、大ヒット曲「if…」へ。渾身のパフォーマンスで思いをまた1つステージに重ねる。最後は「U.S.A.」で会場をまるごと“アゲアゲ”のディスコに変貌させ、そこで元メンバーのShinobuとYukinariもステージに飛び入り。ユーロビートに乗せたカチャーシーを新旧メンバーで一緒になって踊ると、最後はISSAの「にふぇーでーびたん!」の声で締めくくった。

貫禄を感じさせるMAXのパフォーマンス(沖縄アクターズスクール大復活祭実行委員会)

 長丁場の大トリを務めたのはMAX。パステルカラーの青で統一した衣装を身にまとい、どっしりとしたビートの「Give me a Shake」をエネルギッシュにパフォーマンスする。“野太い”と言ってもいいくらいに力強い歌声と地に足のついたダンスには、経験値の高さによる大きな説得力がある。

 「tacata’」「GET MY LOVE」「TORA TORA TORA」と、会場に巨大なミラーボールを設置したくなるような楽曲を立て続けに披露すると、メンバーが「みんなで踊ろう」と呼びかけて「RIDE ON TIME」が鳴り出した。客席はもうすでにダンスフロアと化していて、それぞれの顔を見合わせて笑顔を浮かべるメンバーたちの楽しそうな空気は、観客にも余すこと無く伝播している。

「アンナさんが1番キレッキレ!」

牧野アンナさん(左から3人目)はこの日最もキレッキレだったと認定された(沖縄アクターズスクール大復活祭実行委員会)

 MAXのステージ終盤には、牧野アンナ“先生”が登場した。30年近く前のアクターズの状況について振り返りながら、MAXの前身となったスーパーモンキーズが「沖縄のスターを生み出すための突破口を切り拓く役割だったんです」と語る。MAXメンバーに合わせて初期メンバーだった振付師の新垣寿子さんもステージに呼び込み、デビューシングル「恋のキュート・ビート」と「ミスターU.S.A」を披露した。

 アンナさんがステージで歌とダンスを披露するのは、実に27年ぶり。パフォーマンスを見届けた島袋は「アンナねーちゃんの踊りが見れて嬉しい!」と思わず感涙し、ISSAは「まだ全然現役ですね!アンナさんが1番キレッキレじゃないすか(笑)」と感嘆の声をあげて会場の笑いを誘っていた。

 アンナさんは「みんなのステージを見てて『伝えよう、楽しませよう』という気持ちが細胞まで浸透していたんだと感じた」と、イベントを総括した。

 グランドフィナーレでは、アクターズスクール生を送り出す時にみんなで歌っていたというSPEEDの「Happy Together」を出演者全員で大合唱。「もうすぐこんな風にいつもあえなくなるんだね/想像できない未来のドアを/アタシたちは開けていく」というフレーズには、20年を超える時の経過で幾重もの意味と思いが積み重なる。肩を組んで、手を繋いで、眩しいライト浴びて、ステージを縦横無尽に動き回って楽しげに歌を歌い合い、文字通りの大団円を迎えた。

(沖縄アクターズスクール大復活祭実行委員会)

 また、第1部のオープニングアクトでは、アンナさんが主宰するダウン症の人たちのためのエンターテインメントチーム「ラブジャンクス」が出演し、好きなダンスを自由に踊れる喜びをステージ上で開放するようなエネルギー溢れるステージを披露。第2部では、今回のイベントのためにオーディションして集めた沖縄の子どもたちで結成した「THE DREAM STAGE」のメンバーがパフォーマンスした。自分を開放したその先で、歌って踊る喜びや楽しさを表現するアクターズの「育成」の根幹を感じさせるフレッシュさが確かにあった。

 3時間半に渡って濃厚なパフォーマンが繰り広げられた大復活祭。青春時代に聴き込んで心に刻み込まれたメロディと、強靭なビート感を携えたエネルギッシュなダンスで会場の空気ごと観客をエモーショナルに震わせたこのイベントが、現地と配信で見届けた多くの人たちの色んな感情を呼び起こし、そしてそれぞれの今をエンパワーメントしたのは間違いない。そう言い切ることができるくらいに、歌い、踊り、楽しんで笑顔になるというプリミティブな喜びに満ち溢れたステージだった。

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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