県漁連が泊魚市場で最後の競り 老朽化で糸満移転、輸送面に懸念も

 
小さな黒板にチョークで数字を書き、魚を競り落とす買い手ら=10月7日午前5時過ぎ、那覇市の泊魚市場

 沖縄県漁業協同組合連合会(県漁連、上原亀一会長)は10月7日午前、泊魚市場内(那覇市泊)では最後となる競りを行った。来週の11日からは、今年4月に糸満漁港内に完成した高度衛生管理機能を備えた新施設で競りを実施する。

 機能移転は、1980年に開設し、42年の歴史を持つ泊魚市場の荷さばき施設の老朽化や狭隘化が主な理由。県漁連は衛生面を改善することで「市場の競争力を高めたい」と展望する。一方、県内最大の消費地である那覇市から離れ、輸送コストの増加を懸念する見方もある。同じく泊魚市場で競りを運営する那覇地区漁業協同組合は今後も同市場で水揚げと競りを続ける。隣接する直売所「泊いゆまち」も営業を継続する。

マグロなど競り落とす

整然と並べられた水揚げされたばかりのマグロ

 7日未明、泊魚市場にはいつもの光景が広がっていた。暗夜の中、岸壁に着けた漁船から次々と魚が水揚げされ、荷さばきスペースに整然と並べられていく。時間の経過と共に仲卸業者などの買い手が集まり、切り目の入れられた魚の尾や皮膚の状態をじっくり見ながら値踏みをしていた。

 午前5時、県漁連が泊魚市場で運営する最後の競りが開始するのを前に、上原会長は集まった関係者を前に「今日が最後の競りになります。これまで沖縄の水産拠点を支えてくれた仲買人、生産者など関係者に感謝申し上げます。新しい施設は、安心安全な水産物を供給できる拠点にしたいと思います」と挨拶した。

挨拶する県漁連の上原亀一会長

 全員で記念撮影後、ベルの音とともに競りが開始。運営者による威勢のいい掛け声に対し、買い手が2つ折りの小さな黒板にチョークで素早く数字を書き入れ、メバチマグロやキハダマグロなどを次々と競り落としていった。

那覇「消費地」、糸満「産地」に

 泊魚市場ではこれまで、重複する作業を効率化するため、県漁連と那覇地区漁協で泊魚市場有限責任事業組合(LPP)を組織して競りを運営してきた。しかし2018年に県漁連が、競り機能の糸満移転を目指す県計画への賛同を決定したことを受け、2021年3月にLLPを解散。その後は同じ荷さばき施設内を2つのエリアに区切ってそれぞれで競りを行ってきた。

泊魚市場の外観

 施設の建物のうち、県漁連が利用していた約7割の部分は今後解体される。上原会長は「隣の『泊いゆまち』ではインバウンドの観光客がたくさん来ていた時、施設が狭くて外で食べる姿もよく見かけた。立ち退くことで一帯を再開発し、泊を『消費地』、糸満を『産地』として活性化させていきたい。糸満では高度な衛生管理ができる。消費者の要望に応えていきたい」と展望した。

 糸満の新施設は開放型である泊の施設とは異なり、ウイルスや害獣などの侵入を防ぐために壁で囲まれた閉鎖型の施設となっている。荷さばき場内に入るには手と靴を洗浄するエリアを通過する必要があり、入退のドアには非接触センサーが採用されている。開閉動作をなくすことで高度衛生管理を図っている。

那覇地区漁協は泊で競り継続

泊魚市場の建物内に貼られた「市場業務移転のお知らせ」の紙

 糸満への移転は、施設の老朽化を受けて20以上前から議論されてきた。しかし買い手からは、最大の消費地である那覇市から離れることによる輸送の不便さや、那覇地区漁協が泊で運営を継続する競りとの競争が激しくなることなどを懸念する声があり、なかなか移転の議論が進展しなかった。

 上原会長は輸送面について「那覇から糸満の交通の便は良くなり、20〜25分くらいで行き来できます。弊害はもうありません」との見解を示し、理解を求める。

 一方、関係者の間では泊魚市場に隣接する泊いゆまちと一体での再開発を望む声も根強い。那覇地区漁協側の敷地内にある仲買人直売センターで働く女性は「県は一体何を考えているのか。直売所と一緒に運営するのが一番いい。那覇を活性化させないとダメだよ」と不満げに語った。


長嶺 真輝

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ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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