台湾人が沖縄を訪れる意外な理由とは OTS台北支所長に訊く

 
OTS台北事務所の與那覇正雄所長=1月9日、台北市内

 昨年6月に訪日観光客(インバウンド)の受け入れが再開されて以降、沖縄にも少しずつ海外からの観光客が戻りつつある。特に台湾・台北は直行便を就航させている航空会社がタイガーエア台湾、Peach、チャイナエアライン、エバー航空、スターラックス航空と5社で、海外路線の中では韓国・ソウルと並んで多く、沖縄のインバウンド観光を語る上で重要な都市と言える。

 台湾人向けに沖縄のツアー販売やレンタカー業務などを行う沖縄ツーリスト(OTS)台北事務所の所長で、台湾在住17年の與那覇正雄さんに、台湾から視た沖縄観光の現状や展望を聞いた。浮かび上がったのは「台北の人にとっては、台湾南部へ旅行に行くより沖縄に行く方が楽」という“精神的な距離の近さ”だ。

隣町感覚で家族を連れて行ける沖縄

台北市(写真ACより)

―台湾から沖縄を訪れる観光客の方はどういった理由で沖縄を選ぶことが多いですか?

「やはり『近い』ということが大きなポイントです。台湾からだと沖縄は1時間ちょっとで行ける海外です。日本の食事を楽しむことができて、日本の買い物ができて、沖縄の文化体験もできます。さらに、沖縄は空港から市街地や観光地が近いですよね。そのアクセスの良さから、お年寄りから小さな子どもまで一緒に行きやすいので、家族旅行の行き先として選ばれています。『海外旅行』というと、移動が大変だというイメージがありますが、台湾の人は沖縄に隣町感覚で行く人も多いです

―隣町に行くぐらい気軽に沖縄に来る人が多いというのは驚きです。

 台湾のリゾート地は、南部に多いんですよ。南部の海や離島の海が、台湾の観光地です。台北からですと、高速鉄道(日本の新幹線に相当)に乗って南部の大都市・高雄まで最短で約1時間半、それからさらに別の交通機関でまた移動しなければなりません。なんだかんだでほぼ1日移動に費やすようなこともあります。それだけではなく、交通費や宿泊費などのコストも高くついてしまいます。そうなると、台北から飛行機に乗って沖縄に行ってしまった方が、近いし安いんですよね。ホテルに関しても、沖縄のリゾートホテルの方が質も高く安いということになります」

―観光地としての沖縄の認知度はどのように高まっていったのでしょうか?

「コロナ前は弊社や沖縄観光コンベンションビューローなどが提供して台湾のテレビで沖縄の旅行番組を組んでもらっていました。また、自動車メーカーが『車を買ったら沖縄旅行プレゼント』というキャンペーンをするなど、いろんな企業がプレゼント企画の賞品として沖縄旅行を掲げていたこともありました。やはり賞品としての『海外旅行』は魅力的ですし、行き先が沖縄だと経費を安価に抑えることができるという事情もあって、とにかく全面的に沖縄旅行がプッシュされていました」

航空便の復活が鍵 1日1便の問題点

―台湾の人にとって沖縄観光の定番はどのようなものがありますか?

「石垣牛やアグー豚、海ブドウや海産物など、台湾に無いものを食べたいというニーズは高いです。人気のあるお土産としては黒糖が挙げられます。沖縄の黒糖は生理痛など女性の身体に優しいという評判が高く、私が普段台湾で生活している中でも、よくそういった話を耳にします。沖縄に出張に行くときにはよく社員からも沖縄の黒糖を買ってきてほしいと頼まれますよ。台湾のみなさんは沖縄に行く前にFacebookやYouTubeで事前に調べて『あれが食べたい、ここに行きたい』と決めてくる場合が多いです。情報源としては雑誌もそうですし、口コミも大きいです」

―口コミが成立するぐらい、これまでたくさんの人が台湾から沖縄に来ているということも言えそうですね。

「みなさん沖縄のことはよく知っていますし『楽しいリゾート地』という認識があります。他の県ですと、どこにあって、どんな場所で、何があって、というような説明がほとんどの場合で必要なんですけど、沖縄の場合はそのような説明も要らないぐらい認知度は高いです」

那覇市の国際通り(写真ACより)

―今後の台湾アウトバウンドの旅行需要をどのように見込んでいますか?

「台湾の人たちは旅行が好きで、この(コロナ禍の)3年間は海外旅行を我慢していたので、一気に旅行者が増えてくると思います。現状として、高齢者や裕福な人は、ヨーロッパに行く人が比較的多いです。日本が好きな人も台湾にはたくさんいますが、日本が海外からの観光の受け入れを再開した割には、それほど来ていない印象です。東京や大阪に行く航空便はそれなりに埋まっていますが、沖縄、北海道、福岡はもともと人気のあった場所にも関わらず現状では半分程度です。理由の一つとして現状では各社1日1便しか飛ばしておらず、スケジュールの選択がしにくいという点があります。また、燃油サーチャージが高騰しているため、円安で本来割安だったはずの飛行機代が相殺されてしまっていて、料金的な魅力がなくなっているという事情もあります」

「人が動くと、物も、経済も、心も動く」

―台湾で旅行業に携わる立場から、今後の展望を教えてください。

台湾と沖縄の交流がやはり一番大事なポイントだと思っています。コロナ前はスポーツやビジネスなどあらゆる分野で交流が活発でした。弁護士や税理士など同業種が集まって国際案件に向けた勉強会も活発だったんですよ。お互いが行き来するようになると、人と人との関係が深まりますよね。その結果、経済も一緒に伸ばせていけますし、言葉や文化を学ぶきっかけにもなって、さらに次世代の交流も深まります。人が動くと、物も、経済も、そして心も動きますから。もともと沖縄は琉球の時代から海外の人との交流を担ってきた場所だったじゃないですか。“人々の交流”をこれからの将来も作っていきたいです」

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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