回復傾向に伴って課題も深刻化…2023年の沖縄観光を考えるために22年を振り返る

 
今年の正月に首里城で開かれた「新春の宴」にて

 2022年は観光業界だけでなく、経済界も含めた社会全体が引き続きコロナ禍の影響下にあった。沖縄県内の感染者数で言えば20、21年を上回る広がりを見せており、流行第7波の時期となった8月には新規感染者数が6,000人を超して過去最多を更新。その一方で、春以降は非常事態宣言などによる行動制限措置はなかったため、特に夏から秋にかけて観光客が急増したことで沖縄観光の回復傾向と景気の持ち直しが発表され、その勢いは年が明けた現在でも続いている。
 観光業界からは23年を“脱コロナ”の年と位置づける声も聞こえてきているが、人手不足や経営の健全化など、コロナ禍突入時から積み重なり深刻化している課題も少なくない。コロナ禍3年目となった2022年を振り返り、今年とこれからの沖縄観光について考える材料としたい。

“レンタカー不足騒動”が全国的話題に

21年には稼働していない車で満たされていた駐車場が、22年に入るとガラガラになっていた(2022年4月)

 改めて22年を振り返ってみると、年明け早々に沖縄は全国に先駆けて第6波に突入。まん延防止等重点措置もあって感染者数は減少したが、3月から8月にかけての感染者数の数字は、人口比の都道府県別では最多であり続けた。沖縄県は22年の1月1日~3月29日までの期間を第6波、3月30日~9月30日までを第7波としている。

 21~22年の年末年始の期間には県内のレンタカー不足が大きな話題となり、春先からゴールデンウィーク(GW)にかけて全国ネットのニュース番組でも取り上げられた。
 県内レンタカーの登録車両台数が19年度から20年度にかけて半数以下まで落ち込んだことに加えて、コロナ禍の影響で世界的な半導体不足と生産工場のロックダウンもあったため、新車の減産で車両確保が追いつかない状況に陥った。

 ハイシーズンとなるGWの期間には最盛期の4割減車・価格は最安値の5割増しという状況になり、関係者は「事業者が耐えて耐えて、息切れした頃に観光客が戻ってきた」と表現した。

 一方、飲食業界からは感染対策として営業制限が繰り返され、それに伴って協力金が支払われる状況が常態化したことで「健全な営業ができなくなっている」という声も上がった。県が定めた認証店制などを含めた感染対策措置についても、飲食店と協力して実証実験が行われたが、その結果をフィードバックした検証・対策が実効性を持った形で実施された例は見当たらない。

 夏頃から観光客が戻り始めると、コロナ禍で不安定な飲食業からの人離れを主な要因とした深刻な人材不足が顕在化した。「どれだけ求人をかけても人が集まらない」(飲食関係者)という声があちこちから聞こえ、店を回す人手が足りず満席に出来ない状態の店が続出。後述するが、人手不足は飲食業に限らずバス業界の運転手・ガイド不足やホテル業界の従業員不足など、様々な分野で深刻化しており、年が明けた現在でも喫緊の大きな課題として観光業界にのしかかっている。

「公平なコロナ支援策を」響き渡る業界の悲鳴

コロナ禍の影響で打撃を受ける中で、公平な支援を求めて声を上げる県内の観光事業者たち(2022年7月20日)

 コロナ支援の給付金が飲食業に偏っている状況を受けて、観光関連事業者が連帯して声を上げる動きもあった。

 5月には観光関連事業者がコロナ禍の損失補償としての協力金支給を県に求める団体が発足し、総決起集会が行われた。飲食店を除いた観光関連の事業者に協力金が支給されていない現状を強調し、海外の観光先進国で損失の7~9割の固定費を補填・補償をして事業存続している例もあることを挙げて、「公平なコロナ支援策を」などと訴えた。

 また、県内の観光関連事業団体で構成する「沖縄ツーリズム産業団体協議会」も、コロナ禍に突入した当初から県への要請を重ね、22年内にも観光事業者への経営支援や那覇空港国際線の早期再開、人材の確保・育成などへの支援を複数回に渡って求めている。しかし、県は産業支援レベルまで踏み込むような具体的な施策は実施しておらず、対応は鈍いと言わざるを得ない。

 こうした沖縄観光の不安定な状態に呼応するように、県が8月に発表した「2021年度沖縄観光に関する県民意識調査」の結果では、観光産業で「働きたくない」「あまり働きたくない」というネガティブな回答が半数を占め、観光業のイメージダウンが明示されることになった

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