回復傾向に伴って課題も深刻化…2023年の沖縄観光を考えるために22年を振り返る

 

秋以降はインバウンド再開の動きも活発化

新たに就航した国際路線で台北から到着した人たち(2022年10月)

 沖縄県の発表では22年8月の入域観光客数が前年同月比で2.2倍の64万800人に上り、19年同月の国内客だけでみるとコロナ前の9割近くまで持ち直した。さらに9月以降も順調に回復し、10月には政府の全国旅行支援が開始されたことで国内客の需要が増大。未だ海外旅行へのハードルが高いこともあり、多くの芸能人やYouTuberが沖縄を訪れている様子もみられ、国内旅行での沖縄人気が爆発した。

 加えて、10月は「那覇大綱挽」や「産業まつり」などの大型イベントが復活し、同月末には開催が1年間延期されていた「世界のウチナーンチュ大会」も開かれるなど、感染者が皆無になったわけではないが、“アフターコロナ”ムードが漂った。県の発表によると、10月の国内客の入域観光客数は、コロナ前の水準を上回り過去最多(62万8,000人)となった

 また、政府の水際対策緩和を受けて、香港や台湾、韓国などの国際路線の運行再開も相次ぎ、11月に入ると20年3月以来停止していた国際クルーズの受け入れ再開も発表。沖縄へのインバウンド復活の動きが活発化し始めた。

沖縄の「持続可能な観光」をどう実現するのか

秋口には目に見えて修学旅行生が増えた(2022年10月)

 「回復」の動きがある一方で、並行して大きな課題となっているのが先にも触れた人材不足の深刻化だ。観光客の増加に伴って、観光業界からは「1度離れた人は戻らない」「労働条件が給与に見合わないという声が多い」といった切実な声が上がっており、受け入れ体制やサービスのクオリティ維持が懸念される状況は、年が明けた現在も継続している。
 とりわけ飲食業関係者からは「人手が足りずフル稼働できない」として、通常通りのキャパで店を回せないことから利幅が狭まっている現状について訴える声も上がった。

 こうした状況に加えて、物価や電気料金の高騰というさらなる“大波”もあり、2023年以降の沖縄観光を展望すると、まだまだ厳しい局面が続く。

 丸3年が経過しようとしているこのコロナ禍で、沖縄の“リーディング産業”に位置づけられている観光業が、如何に外的要因の影響を受けやすいのかが露呈され、同時にそこに依存する県経済の構造と脆弱性も露わになった。

 2期目に突入した玉城デニー知事が重点項目として掲げている「県経済と県民生活の再生」を具体的に実現するためには、医療と経済との“両輪”を回すためのエビデンスを積み上げていくことが不可欠だろう。が、これまでの期間で感染拡大や防止について、医療体制の逼迫を回避しつつ、健全な経済活動を維持するための定量的なデータを収集して施策に生かすための検証・分析が十分に成されきたかどうかには疑問を感じざるをえない。

 年末年始の休みが明けてすぐさま、県内では新型コロナ新規感染者数が連日2,000人を超える期間もあった上、インフルエンザ注意報が発令されたこともあり、新年早々医療面でも予断を許さない状況になっている。新型コロナの感染症法上の位置づけを「2類」から「5類」に見直す検討も進められているが、完全な収束という出口はまだまだ見えない。

 新型コロナと共存せざるを得ない中、2023年は沖縄における「持続可能な観光」とはどうあるべきかにあらためて向き合い、そして長年唱えられ続けている「量から質への転換」の糸口を何処に、どのように見出すのかが問われる年になりそうだ。

■関連リンク
質の高い観光を模索する「チャレンジの1年」 OCVB会長 新春インタビュー② ‖ HUB沖縄
国内客最多の62万8000人 沖縄入域観光客10月 ‖ HUB沖縄
「観光客は戻っても売上は戻っていない」 苦境続く観光業界の不満噴出 ‖ HUB沖縄

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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