市民×技術で南風原「非公式議会アプリ」県や那覇などにも展開へ

 

 例えば、行政統計のエクセルデータ。エクセルにまとめているので、データ活用が一見簡単そうではあるが「人が見やすいこと」と「パソコンが読みとりやすいこと」は違う。大事なのは、1つの塊として情報を並べて、一気に読み込ませられる環境を作ることだという。

人間にとって見やすい例。右のように縦の列と横の行に項目を作って表のようにした「2次元」の形の場合、一度にデータとして取り込むことができない。

パソコンで読み取りやすい例。項目は上にしかないため、各列が「情報の塊」としてすぐに転用することができる。

 文字情報が“ウェブでの活用を想定している”ということも、見落とせないポイントとなる。南風原町に限らず、各市町村の議会事務局が議会での質疑内容を掲載・発行する「議会だより」は、基本的に紙で読まれることを想定した紙面づくりになっている。そのため、議会だよりのPDFデータからパソコン上で文字情報を整理する際に、コピー&ペーストが思うようにいかず、それだけでも膨大な手間が蓄積されることになってしまう。

オープンデータとして冊子やPDFだけではなく、利用しやすいテキストデータのみも公開している「福岡市政だより」の例

「住民が行政の消費者になるだけの時代ではない」

 オープンデータを活用したシビックテックの事例として、国内では保育所の情報を地図と連動させたり、ゴミの分別や収集を分かりやすく案内したりするなどの実績が積み上がりつつある。選挙やコロナ対策など、ありとあらゆる分野に活用できる。

 玉城さんは「オープンデータがあれば、住民の側が自発的に、しかも自分たちにとって利便性の高い形で活用することができます。行政としても業務効率化や、情報発信の意義につながるので、住民・行政の双方にとってメリットがあります」と話す。「住民が行政の消費者になるだけの時代ではありません。住民の側からもできることがどんどん増えています」

 行政の側からのアプローチも進む。例えば宜野湾市は10月から毎週土曜日に市民向けのシビックテック講座をオンラインで開くなど、取り組みを進めている。

教育を通して「社会を一緒によくする仲間を」

 玉城さんがこのように「地元に貢献や還元をしたい」と思うのは、自身の恵まれてきた環境は、決して自分の力ではなく家族や地元の人々など周囲の助けのおかげで今がある、と思い続けているからだ。塾の生徒にも「大学進学を目指し予備校に通える時点ですでに恵まれている環境に立たせてもらえているのだから、そのことを自覚して社会を良くするために動いていってほしい」とのメッセージを届けている。

 「生徒に対して、そういうことを実践している姿を見せるためにも、このアプリを作りました。社会を一緒に良くする仲間を育てなきゃいけないと思っています」

 非公式議会アプリもどんどんアップグレードしていく予定だ。「今度は各議員さんのマニフェストを入れて、どのぐらい達成できたのかなども入れていきたいです」と話す。すでに同アプリについての問い合わせや反応も県外から届いてきているといい、玉城さんのアイデアが全国的に羽ばたくことも現実味を増してきている。

■関連リンク
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長濱 良起

投稿者記事一覧

フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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