今あえて問う「首里城火災の責任」(上)

 
復元のための作業が進む首里城(2021年9月撮影)

 「沖縄のシンボル」「沖縄の魂」「沖縄のアイデンティティー」と称された首里城が2019年10月31日に消失してから2年がたった。その間、再建費用として国内外から寄せられた寄付金は53億2594万3,868円に達した(10月31日現在)。

 再建こそが前向きな「未来志向」だと疑わない世論が支配するなか、原因追及と管理責任の明確化なくして再発防止はないと、再建に前のめりになる世論を横目に見る人たちがいるのも事実だ。那覇市消防局が作成した報告書を基に書かれた再現劇から見えてきた出火原因と指定管理者の美ら島財団の管理責任などを上下2回に分けてお送りする。

「管理責任の所在を明確に」県を相手取り住民訴訟

 出火原因や責任の在り処が真正面から問われることなく急ピッチで再建工事が進むなか、誰も責任を取らないことに憤った人々が立ち上がった。

 有志8人による「首里城火災の管理責任を問う沖縄県民の会」(県民の会)は、正殿など6棟が全焼したのは、県から施設の運営を委託されていた指定管理者「沖縄美ら島財団」の責任だとして、「損害賠償金1億9,730万円及びこれに対する令和元年10月31日から支払い済まで年5分の割合による金員の支払い」を財団に請求することを県側に求める住民訴訟の第1回口頭弁論が11月16日、那覇地裁(福渡裕貴裁判長)で開かれた。

 県側は答弁書で「財団が防災や施設の維持管理に関する一切の責任を負っていたわけではない」などと反論し、「財団の施設の管理に問題はない」と自らの責任を否定し、請求棄却を求めた。

 原告の一人、石岡裕さんが意見陳述した。

「沖縄が好きで移住した大和人(やまとぅんちゅ)です。消失した建物はいずれも現代の復元ですが、その内部に所蔵された県の重要文化財を含むかけがえのない、民族の宝物が灰になりました。スプリンクラーの設置義務がないとはいえ、展示物を守ろうという意識があったのか、怒りを覚えます。

 県は積極的に火事の原因を究明し開示すべきです。しかしながら2年がたっても、原因も責任の所在もうやむやにし、県民の意識からも薄らぎつつあります。県議会もスルーし、誰もそこには斬りこまない。できるだけ責任問題には触れずに再建にひた走る。

 とてももやもやした気分で過ごしてきました。こんな現状に一石を投じ、裁判の過程を通じて、できれば火災原因を特定し、管理責任の所在を明確にして、再建後の首里城の管理体制が一新されることを願って立ち上がりました」

口頭弁論に先立ち再現劇

 口頭弁論に先立って13日、「首里の火柱と沖縄の未来 第3回 責任者出てこい!」の再現劇とシンポジウムが開催された。会場は奇しくも美ら島財団が指定管理団体となっている県立博物館・美術館講堂。

 原告団弁護士の德永信一さんが、500ページに及ぶ那覇市消防局の報告書を入手し、読み込んで脚本を書き上げたという再現劇「責任者出てこい!」は、出演者全員が素人ながら迫真の演技を見せた。

 全4幕のあらすじはこうだ。

第一幕 火災から約9カ月前の2018年2月。首里城の管理主体が国から県に移管された時期と重なる。正殿1階で工事中の助監督とADが、度重なる火災警報のサイレンに苛立ち、工事の手を止める。

 観光順路を照らすLED照明の電源をめぐり、「本当はだめなんだけど」と言いながら、分電盤の横にコンセントを付けてたこ足配線で確保する。

 点灯したのを確認し現場を去ろうとした矢先、またも火災報知器が鳴ったので、「またも誤報だ。こんなんじゃ作業にならない」と、後から来た監督に促され、ADは報知器の電源を落としに行く。

第二幕 2019年10月31日未明(2時半頃)。場所は首里城郭内の宿直室。警備員の先輩と後輩が仮眠を取っていると、火災報知器とは違う赤外線式防犯警報(防犯ブザー)が鳴り響く。

 警報が鳴った時は2人で見回りに行くとマニュアルにあるが、先輩は後輩一人に行かせる。後輩が血相を変え、正殿が火事になったと駆け戻る。火災警報より先に防犯ブザーが鳴るのをいぶかりながら、現場に向かう2人。今度は火災警報が鳴る。

 既に正殿から黒煙が噴き出していて、懐中電灯を持って正殿内に突撃しようとするが、火の手の勢いに押され、近づくことができない。消防署への連絡を確かめる先輩に、後輩はたじろぐ。「えっ、自分していませんよ。先輩が連絡してくれたんじゃないんですか」

第三幕 那覇市消防局。警備員ではなくセキュリティー会社から火事の一報が届く。宜野湾市、糸満市、浦添市、糸満市などからも応援が入り、市消防局始まって以来の60台が出動する。

 「なんとしても我々の手で首里城が燃えてしまうのを阻止するんだ」と意気込む村松隊長。消防車1号が管理事務所に駆け付け、火元を尋ねると、管理人は「火事? どこが火事なんですか」。警備員は「だから。それをワシに聞かれても困りますって」と間延びした対応。

 結果、60台の消防車は首里城公園の周りをぐるぐる回り続け、消火作業に後れが生じる。

第四幕 消火用ホースをポンプ車に接続し、放水態勢に入る。しかし、消火栓は城郭の外。急ぎ接続し、「いざ突撃!」のはずが、堅牢な城門が侵入を拒む。二つの城門の鍵を探すのに手間取り、なおも三つ目の城門は鍵が見つからず、大木槌で叩き壊してやっと火元に到着する。

 蛇腹のホースを抱えて「イケー、どんどんイケー」と放水開始。やっと放水できると思ったのも束の間、蛇口から水流が消える。消火栓につながれた防水用の貯水槽の水が底を尽いたのだ。

 放水は中断。へたり込む村松隊長と呆然と立ち尽くす嵐隊員と隼田隊員。東の空が明るみ、正殿天井が焼け落ちる。

場内からは笑いと歓声 

 弁護士の德永信一さんが脚本を書き、有志らが熱演した「再現劇」に場内は笑いと歓声に包まれた。(下)では、德永信一弁護士ら住民訴訟原告団「沖縄県民の会」が解明した新事実をひもとく。

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友寄 貞丸

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伊江村出身。1990年から主に中国、台湾の取材執筆活動を続ける。2014年11月Uターン。著書に『雲南哀楽紀行』(愛育社)など。国境を越えても一線を越えない旅と取材を信条とする。

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