【沖縄の一斉休校②】学校オンライン化が遅れる理由

 

 全国で唯一、2度目の一斉休校を経験した沖縄。一斉休校は子供たちの学びに一体何をもたらしたのでしょうか。沖縄の子供たち、保護者たち、そして先生たちが乗り越えた“苦難”の2週間を振り返り、目指すべき道標を探ります。今回の大きなテーマは「GIGA(ギガ)スクール構想」と沖縄の教育現場です。

休校中の学習指導の実態

 国は2019年から「GIGAスクール構想」と銘打って、全国の小中学生にまんべんなく1人1台ずつパソコン端末を配布する事業をスタートし、2021年に入ってようやく沖縄の小中学校でも子供たちの手元に端末が届き始めたところです。
 しかし、沖縄タイムスによると、県教育委員会が市町村立の小中学校396校に調査したところ、4月の段階で「オンライン授業ができる」と回答したのは1.5%=6校、「データなどで教材や宿題を提供できる」は7.3%=29校だったといいます。また、パソコン端末がすでに届いている学校でも、持ち帰って自宅学習に使ってもらうことについて「検討中」「できない」という回答が合計で8割を超えたそうです。今回の一斉休校でも、多くの小中学校で、端末は届いていても準備が間に合わず持ち帰って活用することができないという状況になってしまいました。

 諦める学校ばかりではなく、収録動画の配信やライブ配信で同時双方向型の授業にチャレンジする学校ももちろんありましたが、まだまだ取り組みは始まったばかりで、手探りながらも頑張ってチャレンジしてみたという印象です。

 結局これでは、家庭での負担が大きくなってしまう。今回の休校でも、こうした課題への対応策は皆無であったと言わざるを得ません。1人1台端末の活用に向けた急ピッチの準備も重要ですが、環境整備が整うまでの間の当面の備えを、まるで怠ってきたわけです。

1人1台端末、もう配布できたの?

 「学びにおける時間・距離などの制約を取り払う」「個別に最適で効果的な学びや支援する」などとして、校内LAN環境の整備や小中学生への1人1台端末の整備などを進める「GIGAスクール構想」。2019年からすでに5,000億円に迫る大きな予算をつぎ込み、特にコロナ禍にあって文部科学省が強力に推進する国の目玉事業です。文部科学省によると、「GIGAスクール元年」とされる令和3年度を見据え、令和2年度中に国内全体の96.5%の市区町村で小中学校に端末が届く計画だったようですが、そのうち約半数は年度内ギリギリの令和3年3月中に配布が完了しました。また、令和3年4月以降に配布が遅れる3.5%=64自治体には沖縄県内の7市町村が含まれているとのことで、いかに県内での配布が遅れているかが分かります。

文部科学省

 小中学校の1人1台端末の環境は、全国的に今ようやく整いはじめたところで、コロナ禍の新たな学習ツールとして効果を発揮するまでには、まだまだ至っていないのが現状なのです。

 さらに、高校は校内LAN などの環境整備は行っていますが、1人1台端末の対象とはなっていません。小中学校のように1人1台を整備しようと思えば、都道府県教育委員会が独自にしなければなりませんが、予算の制約も大きく、今のところすぐには期待ができないでしょう。

文科省を横目に、学習のICT化を進める経産省

 そんな文部科学省の動きを横目に、実は経済産業省が学習のICT化に年々力を入れてきています。「未来の教室」実証事業と題して、オンライン学習に関する民間のノウハウ・ツールを経済産業省お墨付きの形で広く公開し、積極的なICT技術の活用を促進しています。

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