遠距離“同性カップル”がパートナーシップを結べた最大の理由

 
パートナーシップ宣誓証明を受けた立石麻由子さん(左)と藤本尚さん=2022年11月、浦添市のハーモニーセンター(本人提供、以下同)

 沖縄県浦添市が実施している「パートナーシップ宣誓証明書」。戸籍上が同性でも、人生のパートナーとして約束した関係であることを証するものだ。2人のうち1人だけが市内に居住か転入予定であれば宣誓が可能となっているため、同居をしていないカップルでもより柔軟な生活スタイルを続けることができる。2022年11月にパートナーシップ宣誓証明を受けた藤本尚さん・立石麻由子さんは、仕事の関係上、沖縄と東京でそれぞれ拠点を持つ遠距離カップルだが、「相手がどこにいてもパートナーシップを受けられるので、すごく未来が見えた」と喜ぶ。

 また、結婚相談所が性的マイノリティーのパートナー探しを支援するなどの動きも見られ、誰もが平等に生涯を共にする相手と過ごせるような社会づくりが進みつつある。

遠距離カップルならではの事情

 オンラインサロンを通して約2年半前に知り合った2人。月に2回程度、あくまで数十人いる出席者同士として顔を合わせる関係性だったが、あることから立石さんが藤本さんにお礼を伝えようと、グループLINEにいた藤本さんへと個別に連絡を取り始めたことが交際のきっかけだった。男性を好きになるのと同じ感覚で、その時にはすでに藤本さんに惹かれていたという。

 藤本さんは浦添市に居住しているが、立石さんは東京を中心に仕事をしていて、沖縄と東京を行ったり来たりしている生活スタイルだ。二人の関係を結ぶ方法を調べていくと、沖縄県内では那覇市と浦添市に、同性カップルのパートナーシップ制度があることが分かった。

 全国的にも先駆けて2016年に始まった那覇市の制度では2人とも市民であるか転入予定でなければならなかったが、浦添市の制度では同様の条件に当てはまるのが1人だけで良かったため「沖縄と東京という遠距離生活を続けていた我々にとっては、すごく未来予想図が作りやすかったんです」(藤本さん)という。性の多様性やパートナーシップの多様性に加えて、ライフスタイルの多様性も担保できることになった。

法的効力なくても「契り」のある意義

実際に発行されたパートナーシップ宣誓証明書(※藤本尚さんの本名表記は藤本尚子さん)

 同性婚の認められていない日本では、パートナーシップ制度自体には法的な効力がない。しかし、宣誓証明書の存在は2人を結ぶ契りとして、形式上とはいえ絆を深めたことは事実だった。

 宣誓証明書の交付申請時には、市職員も自分のことのように涙を流して喜んでくれたという。

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