新年を寿ぎ、平穏を祈る 首里城で「新春の宴」開催
- 2023/1/1
- 社会
那覇市にある首里城公園で1月1日から初春を寿ぐ「新春の宴」が始まっている。琉球王国時代に行われていた儀式の再現や宮廷音楽の演奏、琉球舞踊など多彩な催しが3日まで行われる。1日午前には、敷地内の下之御庭(しちゃぬうなー)で正月儀式「朝拝御規式(ちょうはいおきしき)」の一部が再現され、色鮮やかな衣装を身にまとって琉球国王に扮した国王役が設置された祭壇に向かい、平和と豊穣を祈願した。
爽やかな青空と暖かな陽射しの下、たくさんの家族連れや観光客が訪れてスマホやカメラのレンズを向けて催しを見守っていた。
琉球王朝時代の儀式を再現
新春の宴は正月期間中に首里城公園で毎年開催されている。朝拝御規式は琉球王国時代の元旦儀式の一部を再現したもので、国王役と王妃役が正殿から高官たちが並ぶ御庭(うなー)に現れて、観客とともに新春を祝うものだ。
イベントで朝拝御規式の一環として再現・披露されたのは、新年を寿ぎ平穏を祈念する「子之方御拝(にぬふぁぬうぬふぇー)」。「子之方」は北の方角を意味しており、北に向かって祈りを捧げるこの儀式は、琉球王朝の国王をはじめとして、王族や摂政、高官、役人、そして庶民の代表も参列する国を挙げて行われる盛大なものだったという。
儀式では、高官2人に続いて国王役と王妃役が登場し、国王役が焼香して合掌しながら祈りを捧げた。ちなみに、当時は王妃は参列することはできなかった。
琉球王朝時代の元旦儀式には関連儀式が多数あり、現在首里城公園で開催されているのはごく一部を再現したものだ。
新春の宴は3日まで開催しており、朝拝御規式のほかにも国王と王妃の出御(お出まし)や、琉球王国時代の宮廷音楽「御座楽」の演奏、古典舞踊や組踊のステージなど、多彩なプログラムが催されている。また、レストラン首里杜では沖縄の代表的な食材を使った正月特別メニューも数量限定で提供している。
沖縄には正月がいくつもある?
沖縄では今日この日の1月1日の新暦の元旦のほかに、旧暦の正月「旧正月」の文化が色濃く残っている。
本土復帰前に琉球政府によって新正月一本化が推奨されて、現在は新正月も本土と同じ様に行っているが、旧正月に親戚・一族で集まって先祖へのあいさつと健康祈願などをする。この時期になると炭を昆布で巻いた供え飾りや、鏡餅、みかん、酒、などの供え物を仏壇に供える。旧正月の作法やその厳密さには地域差があるが、現在は主に糸満市などの南部で風習が根強く残っている傾向がみられる。
そもそも旧暦は月の満ち欠けの周期を基準にした「太陰暦」のことで、この算定方法だと1年は354日になり、新暦と比べると約11日短くなる。この旧暦が沖縄の文化に色濃く残っているのは、琉球王朝時代から中華圏やアジア諸国との交流が盛んに行われていたからだ。多くの儀式や行事は旧暦を基に生活に根付いており、それが現在まで引き継がれている。
旧正月のほかにも、清明祭(シーミー)や旧盆、七夕、風車祭(カジマヤー)などが大行的なところだろう。ちなみに2023年の旧正月は新暦で1月22日となっている。