“人間くささ”を感じる50年前の風景 なはーとで「OKINAWA あの日の大博覧会」
- 2023/1/16
- 社会
那覇文化芸術劇場なはーとで、1950~80年代の沖縄の映像を展示する「OKINAWA あの日の大博覧会」が始まっている。上映されているのは、主に家族で行楽地に出かけた思い出の記録やかつて県内で催された祭りの風景、そしてなはーとがある那覇市近辺の8mmフィルムの映像。当時の様子を知る人には懐かしいものとして、歴史としてしか知らない若い世代にとってはある意味で“新鮮”なものとして感じるかもしれない、興味深い映像の数々を堪能できる。
会場構成・演出をした沖縄アーカイブ研究所の真喜屋力さんは「“そこに住んでた人しか面白がれない”という8mmのホームムービー映像を、ちゃんと面白がってくれる人たちに観てもらうことが最大の価値だと思っています。色々なドラマを見出してほしいですね」と語り、来場を呼びかけている。入場は無料で、会期は2月4日までとなっている。
300時間のアーカイブから紡ぎ出す映像
会場のなはーと小スタジオ入口に差し掛かると、本土復帰直前1971年に国場ビルから撮影された那覇市のパノラマ映像の大きなパネルが出迎える。カメラを水平方向に振って広範囲を撮影した映像(パン・ショット)を複数の静止画にしてつなぎ合わせて、1枚の画像にしたという。
「パン・ショットをつなぐことで出る雰囲気があるんですよね。自分の縁のある場所を見つけたら、手前に設置してある付箋に書き込んでペタペタ貼り付けてください」(真喜屋さん)
映像は真喜屋さんが8mmフィルムをデジタル化したもの。現在沖縄アーカイブ研究所が所蔵しているフィルムは2,248本で、時間にすると約300時間に及ぶ。
会場中央には大型スクリーンが設置されており、様々な年代のかつての沖縄の「あの日」の情景が映し出される。加えて、それらの映像に刺激を受けて撮り下ろされたアーティストによる新作映像も公開されている。
また、会場の両脇に設置された複数のモニターでは“映像の展示”をする「思い出パビリオン」がある。「路上にて」「行楽地は楽し」「家族の風景」「祭と祈り」「国際通りと那覇市」「変わりゆく郷土」の6つのテーマに合わせて15~20分に編集された映像が流れる。今では見かけなくなった形の車や、三越や山形屋などのデパートの屋上にあった遊園地、我が子の出産の様子、伝統的な祭祀、変わりゆく景色の中で未だ残る建物を見つけられる国際通りの風景…。
当時を知る人同士で訪れれば、映像を観ながら話す中で今まで忘れていたような思い出がよみがえってくるかもしれない。
ファインダーを覗く撮影者の思いがにじむ
「上映という1本のラインをたどる形式ではなくて、好きなものを好きなだけ観て楽しんでもらいたいということで、“映像展示”という形にしました」と真喜屋さんは企画意図を説明する。
そして8mmフィルムのホームムービー映像の魅力について「技術的なことで言えば下手なんですけど(笑)、撮影者の思いがとても強いんです」と話す。「基本的に映像作品ではカメラマンは気配を消すものなのですが、展示している映像ではファインダーを覗いている撮影者がその場で観ていた50年前の風景を観られます。そこに撮影者の思いを汲み取ることができて、とても“人間くささ”を感じられるのが楽しいし、味わい深いですね」と付け加えた。