西表島内5カ所で観光立入制限、自然保護と両立へ エコツーリズム推進全体構想を認定

 
西表島のヒナイ川付近のジャングル(資料写真)

 環境省は7日、適切な観光管理の下で西表島におけるエコツーリズムの実現を図るため、竹富町が申請した「西表島エコツーリズム推進全体構想」を認定した。2021年7月にユネスコの世界自然遺産に登録された西表島では観光利用の増加で自然保護における課題が生じていたため、今回の構想では島内5カ所で1日の立入り人数の上限を設定するなど制限を設けている。

 エコツーリズム推進法に基づく全体構想の認定は今回が22件目。沖縄県内では2012年6月に認定された渡嘉敷村と座間味村の「慶良間地域エコツーリズム推進全体構想」以来、2件目となる。

「質の低いガイド事業者」など課題顕在化

 構想の目的は「西表島の自然を損なうことなく持続的に利用し、将来にわたって自然からの恵み得る」こと。西表島では近年、自然体験型観光の増加で利用フィールドやガイド事業者の課題が生じていることが構想策定の背景にある。

 利用フィールドにおける課題は「無秩序な拡散・拡大」「利用圧による自然環境への影響」「利用集中による利用の質の低下」、ガイド事業者の課題には「事業者の急激な増加」「質の低いガイド事業者の存在」「ガイド同士の認識共有・連携の不足」をそれぞれ挙げた。

 その上で、市町村によって保護の措置を講じるために指定される「特定自然観光資源」における立入制限や利用ルール、ゾーニングと観光利用の考え方、モニタリング体制などを盛り込んだ今回の構想と、ガイドを行う事業者が町長の免許認定を受けることや、免許申請に必要な要件、処分などを規定した「竹富町観光案内人条例」が連携することにより、目的の達成を目指す。

「自然体験」「一般利用」「保護」の3つにゾーン分け

西表島のマングローブ(資料写真)

 目的別で地域を区分けするゾーニングでは、島と周辺海域を①自然体験ゾーン②一般利用ゾーン③保護ゾーンーの3つに区分。②は一般的なマナーや各施設が定めるルールの遵守、所有地などに無断立入しなければ観光利用が可能で、③は原則として観光利用は不可とした。

 構想で細かくルールを設けたのは、一定のルールの下で観光利用を行う①の自然体験ゾーンだ。世界自然遺産内外に関わらず、「地域または海域を移動する事前体験ツアーの中で活用される自然観光資源」に含まれる山や川などの主要な利用ルートが対象エリアとなる。

 一般利用者向けのルールを26項目設定したほか、陸域と海域に分けて事業者向けのルールも設けた。共通ルールとして動植物・自然への影響の抑制やゴミやトイレの処理、船長・船の航行、ポイントの利用方法、港湾利用などを記す。

 個別ルールでは、陸域で「ガイド1人当たりや1事業者当たりの案内人数の規定(エリア毎)」「自然観光資源として利用可能な範囲」を定め、海域では「ガイド1人当たりの案内人数(アクティビティ毎)」「バラス島利用ルール」などを設定した。

「ヒナイ川」は1日200人まで

 また、自然体験ゾーン内の特定自然観光資源における立入制限では、以下の5カ所についてそれぞれ1日の立入上限人数を設定した。

①ヒナイ川=200人

②西田川=100人

③古見岳=30人

④浦内川源流域(横断道)=50人

⑤テドウ川=30人

 年間を通じて、この特定自然観光資源に立ち入る場合は竹富町長に事前申請を行い、承認を得る必要がある。適正利用を図るため、竹富町西表島エコツーリズム推進協議会が指定する要件を満たす人の同行、または講習の受講などが承認の条件となる。

 その他、構想では自然観光資源の利用者数や自然環境の状況をモニタリング調査し、その都度利用ルールを見直したり、保全事業の対策を講じたりすることなどを記載。推進協議会にモニタリング評価委員会やガイド事業者との調整を行うワーキンググループを設けることも盛り込んだ。


長嶺 真輝

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ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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