「安全・安心で豊かな県に」   玉城デニー沖縄県知事、新春インタビュー

 
沖縄県庁

―復帰50年という節目を終えて、知事としての成果と残された課題

 自立、共生、多様性の理念のもと、包摂性と寛容性に基づきながら、子供の貧困、人権問題、すべての人の尊厳を守るという理念や考え方で、さまざまな施策を進めてきた。

 経済分野では、県観光振興基金を設置し40億円を原資とした。企業の事業継承、従業員に対する奨学金返還支援への補助創設など、中小企業支援を拡充したほか、農作物種苗生産条例の制定や、性の多様性尊重宣言も行った。

 私がポリシーとしている「誰一人取り残さない社会」の実現に向けては、子供の貧困対策推進基金を60億円に積み増して、貧困対策の着実な解消に向けて取り組みを進めている。

 ただ、一人当たり県民所得の向上や非正規雇用から正規雇用への展開、米軍基地問題など沖縄の特殊事情から派生する課題についての取り組みは、進化させなければならない。

 新沖縄21世紀ビジョン基本計画に基づく施策を着実に推進することで、社会・経済・環境の3側面が一体となった、安全・安心で真に豊かな島を県民が実感できる取り組みへと深める必要がある。

辺野古、県の主張が認められるよう全力

―辺野古移設阻止の取り組み

 去る12月8日、最高裁は、抗告訴訟によって審査庁である国が行った裁決を争うこと自体を認めずに、都道府県は取消訴訟を提起する資格を有しないとして、県の上告を棄却した。

 県が行った、不承認処分の適法性や裁決理由の誤りなどについての判断は一切示されていない。国が私人の権利救済制度である行政不服審査制度を用いれば、いわゆる裁定的関与について司法審査を回避できることに対しては、疑問を持たざるを得ない。

 しかし、変更承認申請が不承認となったことで、沖縄防衛局は大浦湾側の工事を行うことができず、依然として埋め立て工事全体を完成させることができない状態が続いているということだと思う。

 引き続き、この裁定的関与の問題については全国知事会とも連携して、憲法が定める地方自治の本旨に基づいた、本来あるべき地方自治の実現を求めるとともに、不承認処分に対する裁決や是正の指示に対する訴訟においては、取り消しを求める県の主張が認められるように全力を尽くしていきたい。

会見で2023年の意気込みを語る玉城デニー知事

政府は国家間の緊張緩和を

―自衛隊の配備や容認できる防衛力の程度について

 災害復旧、1万回に達した離島における急患搬送、不発弾の処理事業、新型コロナウイルス対応での看護官派遣などの自衛隊活動については、多くの県民も理解を示していると思う。

 しかし、米軍基地の整理縮小が現実的に進んでいない中で、自衛隊の増強が重なっていることについては、多くの県民も不安を抱かざるを得ない現状がある。政府は、十分な説明、協議を果たしてほしい。

-台湾有事への懸念が日々強まっています

 政府による一番の責任は、有事に繋がるような偶発的な状況は排除するということ、そのためには国家間における緊張緩和と平和と信頼の関係を構築するためのホットラインを常に繋いでおくことが重要だろうと思っている。

 77年前の沖縄の状況を再び引き起こすようなことは、決してしない、絶対にさせないとのメッセージを政府は伝える必要がある。

-国民保護の考え方

 県としても、先島(宮古・八重山)の住民を本土に移動させることができるかなどについて、手段や日数を予想しておく必要があると思う。

 国民保護を所管する内閣官房、消防庁、国土交通省といった関係省庁による住民避難の輸送手段の確保など、沖縄の国民保護に対する特段の関与が必要で、議論を重ねていきたい。

―平和構築への自治体外交

 琉球王国時代から600年以上にわたる地域間交流を続けてきたことは、非常に歴史的にも有益だ。台湾や福建省とは留学生の派遣、受け入れを行っているほか、県の海外事務所や駐在所は北京、上海、香港、台北、福州に設置している。アジアの要衝にある地理的な優位性で、人間の安全保障を構築するための平和拠点にしていきたい。

観光では社会、経済、環境を調和

―新型コロナ対策について

 ウイルスの性質、感染力や病原性の変化に応じて、医療機関、施設、さまざまな県民の事業体の協力も得ながら取り組んできた。国も、新たな行動制限は実施しないことを基本方針とし、(感染)レベル分類ごとの対策を示している。

 (今後も)感染が拡大した場合には、医療のひっ迫状況などに応じて感染防止対策を強化していくよう県民に呼び掛けたい。2類から5類への変更については、国の検討状況に関する情報もしっかり収集していく。

-観光政策について

 新型コロナの影響で、沖縄観光は非常に大きな影響を受けてきた。観光振興に向けては、防疫体制と受け入れ体制を強化した上で、社会、経済、環境の調和を実現していくことが重要だ。観光産業には、いち早くコロナ前に戻ってほしいと願っているし、政府も観光需要に対して全国的な需要喚起策を進めている。

 また、コロナ以降の観光では、量と質のバランスが取れた観光地マネジメントに取り組んでいくことが必要だ。

「保守・革新によらず真摯に協議」

-昨年の知事選では再選を果たしました

 県経済の再生、子供や若者・女性の新たな課題に対する取り組み、そして基地問題、特に辺野古の新基地建設反対など各種施策について、多くの県民の皆さまから引き続き取り組んでほしいとの信任を得たと受け止めている。同時に、責任も重大性を増したと認識している。

―厳しい結果が続いた首長選については

 直近の那覇市長選挙で当選した知念覚市長とも、那覇軍港の問題など共通の課題について、意見交換しながら一緒に取り組んでいこうと話をした。

 子供の貧困問題の解決や、子供たちの健やかな成長を支えていく観点から考えれば、思想信条の保守・革新によらず、真摯(しんし)に協議をしながら取り組みを進める姿勢が大切だと思っている。

-経済発展のため二期目で成し遂げたいと考える政策

 デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進や、イノベーションの創出、稼ぐ力の強化による企業や雇用のさらなる充実、県内における起業家の育成と継続的な支援をしていくための取り組みを行っていきたい。

 また、ITや農林水産業をどのように観光と連携させていくかが非常に重要な取り組みに繋がると思う。現在の観光回復の状況から成長に繋げていくための観光振興戦略の展開も重要だ。

(記事・写真 宮古毎日新聞)

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