衆院選終盤レポート<沖縄1区> 保守分裂の影響は

 

 10月31日に投開票の衆議院選挙は、残り1週間を切った。短期決戦のなか激しい選挙戦にしのぎを削る各陣営の動きを紹介する。まずは、那覇市や久米島町、渡嘉敷村、座間味村、粟国村、渡名喜村、南大東村、北大東村の離島各町村からなる沖縄1区だ。

オール沖縄の結束を強調

「辺野古新基地建設を止めるためには政権交代しかないのです」
 27日の正午過ぎ、那覇市泉崎の県民広場に共産党前職の赤嶺政賢氏(73)が街頭演説に立った。

 「オール沖縄で政権交代」と書かれた緑色の幟がひしめく会場に東京から駆けつけたのは、共産党の志位和夫委員長。沖縄1区はこれまで2014年と2017年の2回にわたり全国唯一、共産党候補が勝利してきた選挙区だけに重視する様子が窺える。全国で立憲民主党と共産党による選挙協力が進むが、オール沖縄はその先駆でもある。

 この日の街頭演説では、立憲民主党や社民党、社大党の議員ら、そして玉城デニー知事や城間幹子那覇市長も次々と応援のスピーチをした。

 革新各党からなるオール沖縄は、玉城知事の後援会長だったこともある有力経済人の金秀グループ・呉屋守將会長や県議会の赤嶺昇議長が相次いで離脱したことから、その勢いにほころびが出たとの見方もあったが、あらためて結束を強調してみせた形だ。

保守合同は実現せず

 一方、オール沖縄に対抗するために、保守陣営では自民党の國場幸之助氏(48)と無所属の下地幹郎氏(60)を支持する勢力との合同を目指す動きも一部にあったが、結局、実現することなく保守分裂のまま選挙戦に突入した。

 自民党の國場氏は、選挙前から毎週末は那覇市久茂地や首里で街頭に立ち、支援を呼びかけていたが、公示後は岸田文雄首相の夫人・裕子さんや小野寺五典元防衛相らが沖縄入りして応援。所属する自民党宏池会の強い後押しを受ける。23日にはオール沖縄からの離脱を表明した金秀グループの呉屋会長が山崎拓元自民党幹事長とともに、國場氏の事務所を訪れて激励した。公明・創価学会との連携も進む。

 岸田政権との距離の近さをアピールし、コロナワクチンの接種証明の活用や検査の無料化、大胆な経済対策、県民所得の倍増計画などを訴える。

那覇市

4度目の三つ巴

 下地氏は選挙前まで自民党の二階俊博前幹事長らのルートで自民党への復党を狙ったが、自民党沖縄県連はこれを拒否。岸田政権の誕生で二階氏が幹事長を退任したことで叶わぬことになった。

 公示3日前のメールマガジンで下地氏は、衆院選に出ないという選択肢もあったことを明らかにながらも、「自民党沖縄県連が正式な協議を一度もすることないという状況では、衆議院選挙に立候補しないという選択肢は到底あり得ない」と出馬に至った経緯を説明した。

 選挙戦では、バイクにまたがって那覇市内を細かく回り、「共産党には辺野古問題を解決できない、自民党沖縄県連は政権には物は言えない」と訴える。さらに、鹿児島県の馬毛島に米軍普天間飛行場のオスプレイの訓練移転をすることで基地負担の軽減を図ることができるとも主張する。

 保守一本化が実現せず、2012 年と2014年、2017年に続く4回目の同じ候補者による三つ巴の選挙戦となった沖縄1区。保守合同が実現しなかった影響がどう出るのか、あるいはオール沖縄が引き続き影響力を持ち続けるのか。短期決戦となった今回の衆院選は、早くも明日からは終盤の三日攻防へと突入する。

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