衆院選で沖縄の保育現場が盛り上がっている理由 若者の立場で選挙を読む
- 2021/10/26
- 政治
10月31日投開票の衆議院議員総選挙。前回2017年の衆院選の沖縄県内投票率は56.38%となるなど、近年は軒並み50%台が続く。比較的投票率が低いと言われる20~40代の層は、今回の衆院選にどのようなまなざしを向けているのか。保育、教育、福祉、観光の各分野に従事する4人に話を聞いた。「選挙自体への盛り上がりは少ない」と話す人が多い一方で、各分野特有の困りごとについて、政治が解決することにもそれぞれの立場で期待を寄せている。
保育士「戦後からシステム変わっていない」
糸満市の保育士・玉城悦一さん(43)は「今回の選挙は、保育関係者が盛り上がっています」と話す。その理由として、選挙公約に保育関係の項目を盛り込んでいる候補者が目立っているからだ。「賃金のアップや(園児の人数に対する保育士の)配置基準が見直されるのではないかと期待しています」
保育士の配置基準は、園児の年齢にもよるが戦後から変わっていないのが現状だ。1948年~51年にかけて、1歳以下の子が10人に対して保育士1人だったが、2015年以降は乳児3人につき1人、1歳児6人につき1人と、一定の改善を見せている。その一方で4歳以上の園児については戦後から現在に至るまで園児30人につき保育士1人となったままだ。
「30人に対して保育士1人だと、例えば1人手を焼く子が出るだけで残りの子どもたちの面倒を見ることはもうできません。1~2歳児については6人に1人ですが、これがもし火事にでもなったらどうするのだろうと疑問です。見直されないと“ヤバい”です」と話す玉城さん。「とにかく議員さんには一回現場を見てみてほしいです」
そんな中で政治に対する期待感も生まれつつあるという。岸田文雄首相が保育士の報酬引き上げを掲げていることだ。待遇が上がれば保育人材も集まるようになり、配置基準が改善される可能性も玉城さんは感じている。
「今がチャンスだと思います。老若男女問わず、周りの保育関係者は『今回は投票に行かないとね』という声が聞こえています」
学校教員「1日の食事が給食1食だけ」
「議員さんは子どもの貧困対策を叫ぶけど、実際には果たして何をしているんだと思う」と話すのは、本島中部の中学校教諭(30代男性)だ。
日々の学校現場で、いわゆる“貧困層”の子どもたちや家庭と接する中で、ひっ迫した現状に政治が追い付いていないことを痛感している。
「経済的な事情で食費を賄えず、1日の食事が給食1食だけの子がいます。クラスに1人まではいきませんが、学年にそういった子が複数人いるのが現実です。ネグレクト(育児放棄)もとても多いです。子どもに3日間も同じ服を着せたり、母親が新しい彼氏を作ってほったらかしにしたりとか。沖縄だけに限らず、どうしても貧困層の方々が救われてないと感じます」
どんな人にも「健康で文化的な最低限度の生活」が保障され、何度でも立ち直れるように生活保護などのセーフティーネットがある。然るべき家庭に然るべき形で生活保護の制度が行き渡るように、男性教諭は「生活保護の不正受給者をまず減らして、本当に生活保護が必要な家庭に対する見守りを強化してほしい」と訴える。
今回の立候補者には「未来を担うのは子どもたち。私利私欲は考えずに、子どもたちのことを考えて動いてほしい」と求める一方で、衆院選自体の盛り上がりがないことは否めない。「(陣営やマスコミなどが)こんなに『衆院選あるよ』って言っていますけど、周囲は誰も選挙の話なんかしていないですからね。投票率は劇的に悪くなるのではないでしょうか」と危惧した。
バスガイド「ツアー客増の施策を」
フリーランスバスガイドの祖慶ありささん(26)=宜野湾市=は、コロナ禍の影響をもろに受けた一人だ。日本国内に新型コロナウイルスの感染が広がり始めた昨年春ごろからバスガイドの仕事はほぼなくなった。「いつもだったら10月は繁忙期なんですが、今年は1件だけでした」