こども家庭庁と沖縄(上)創設で問われる国や県の覚悟

 
文部科学省
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 政府は昨年12月21日、子供政策の司令塔となる「こども家庭庁」の創設に向けた基本方針を閣議決定しました。子供の自殺、貧困、いじめ、不登校、虐待、そして少子化。日本の子供たちを巡る危機的状況の打開に向けて、昨年初旬に打ち出されたこの省庁再編構想は、幾多の紆余曲折を経て、なんとか年末までに設立の方針がまとまるに至りました。

 特に沖縄は、いじめや不登校の割合が全国に比べて高水準にあるなど、子供を取り巻く環境が深刻な状況にあります。言い換えれば、「こども家庭庁」創設は、どこよりも一層改善が必要な沖縄にとって最も大きな影響をもたらし得る改革とも言えるのです。「こども家庭庁」のこれまで経緯を通して、今後の沖縄の子供施策を考える2回シリーズの前編です。

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閣議決定の意味

 政府の閣議決定では、子供政策を社会の真ん中に据えて、子供の健やかな成長を社会全体で後押しするため、新たな司令塔としてこども家庭庁を令和5年度の早いうちに設置するとしています。具体的には、主に内閣府の子供の貧困対策担当や子ども・子育て支援本部(認定こども園や児童手当などを担当)、厚労省の子ども家庭局(保育所や子育て支援などを担当)を移管し、新たに「企画立案・総合調整部門」「成育部門」「支援部門」という3部門の体制とすることなどが示されました。特に、各府省庁に分かれている子供政策に関する総合調整権限をここに一本化し、担当大臣に各府省庁への勧告権が設けられたところが特徴です。

 昨年1月に突如動き出した構想が、2月からの自民党内での議論、7月からの関係省庁による検討会議、そして9月からの有識者会議を経て、年末になってようやく閣議決定、すなわち、政府の正式な意志決定となったのです。

「こども庁」から「こども家庭庁」へ

 閣議決定に至るまでには、いくつもの論点でギリギリまでせめぎ合いが続きました。中でも大きな議論となったのが名称です。昨年12月2日に各府省庁の事務方による検討会議がまとめた案までは一貫して「こども庁」となっていましたが、直後の7日と15日に開催された自民党内の会議で「家庭」の文字が追加されたのです。これには、子育ては家庭への支援が基本とする自民党内の強い意見に配慮したという報道もあれば、「子ども家庭庁」や「子ども家庭省」の設置を公約に掲げる公明党や立憲民主党に配慮したという報道もありました。

 たかが名称、大切なのは中身だとも思いますが、やはり名は体を表すもので、「子育ては基本的に家庭で」という、少し突き放したようなスタンスを感じずにはいられないという方も多いのではないでしょうか。困難な家庭環境にある当事者や支援者には、理念に反した誤ったメッセージになりかねないとも感じます。しかし一方で、こども家庭庁実現に向けた賢い政治判断とも読み取れます。これから始まる国会審議に向けて、少しでも火種を消しておく方が賢明だからです。まさに政策実現へ向けた余念のない布石であったとも言えるでしょう。

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