こども家庭庁と沖縄(上)創設で問われる国や県の覚悟

 

業務移管を阻止した文科省

 ギリギリまで攻防が続いたもう1つの論点。それは、文科省の業務移管です。ほとんど移管されることなく、文科省にそのまま残されることとなりました。これには自民党内にも強い懸念があり、最終的な譲歩として、文科省所管の幼稚園(幼稚園教育要領の策定)やいじめ対策は、こども家庭庁と共同で対応することとなりました。共同とはいえ、総合調整権限を持つこども家庭庁は文科省よりも一歩強い立場で対応できることになると考えてよいでしょう。これが閣議決定直前の自民党内の会議でようやく決まったのです。

 昨年初旬の省庁再編案が浮上した当初から根回しの早かった文科省。幼稚園から大学までの「学校教育」を中心とする文部科学行政の体系をしっかりと守りました。これには文科省も相当の努力を払ったことでしょう。しかし、子供政策の中心である文科省が業務移管について全く非協力的との印象も避けたいので、重要な幼稚園教育やいじめ対策に関しては、こども家庭庁と共同で対応という譲歩を見せたと捉えることができます。

菅前首相の辞任で骨抜きになった「縦割り打破」

 菅前首相の発案から突如浮上したとされるこども家庭庁構想。6月までには自民党内で大きな方向性を固め、7月には関係省庁の事務方による会議がスタート。9月には有識者会議が始まろとしていた矢先、菅前首相は突如、辞任の意志を公表したのです。その後5回にわたる有識者会議から事務方による基本方針の作成に至るまで、表立った政治的な動きはほとんどありませんでした。すなわち、基本方針の大部分は、水面下で官僚が主導権を握ったまま進められていったと考えられます。

 こども家庭庁の肝は、縦割り行政の打破です。しかし、長年の懸案となっている保育所、幼稚園、認定こども園の「三重行政」の解消に今回も踏み込めなかっただけでなく、学校や児童相談所、矯正施設といった所管省庁の異なるシステムの融合や連携のあり方の改革などの道筋が現時点で全く見えない状況です。やはり言い出しっぺのリーダーが不在では議論が失速し、縦割り打破の理念はすでに骨抜きになってしまったと言わざるを得ません。

問われる国や沖縄県の覚悟

沖縄県庁

 子供を取り巻く環境に多くの課題を抱える沖縄にとって、こども家庭庁の成否は非常に重要です。単なる政治的パフォーマンスに終わるようなことは決してあってはなりません。骨抜きの感が否めないとはいえ、閣議決定した基本方針はあくまで大枠であり、詰めるべき重要な論点はまだまだたくさんあるのです。実効性ある新組織となるか、これからも更に注目していく必要があります。

 沖縄県としても「沖縄県子どもの貧困対策計画」をテコに、県内の官民を挙げた「沖縄子どもの未来県民会議」を中心として子供関連の施策を総合的に展開しようと努力しています。こども家庭庁の発足は、県の組織体制や子供施策のあり方にも大きな影響をもたらします。政府の方針に合わせて、県もより積極的に手を打っていかなければなりません。今回の議論の盛り上がりをチャンスに、国や県の本気を見せてほしいと期待するばかりです。

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