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こども家庭庁と沖縄(下)「こどもまんなか社会」を創るには
- 2022/1/4
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日本の子供を取り巻く危機的状況を打開すべく、菅前首相の大号令で突如動き出したこども家庭庁構想は、創設に向けた基本方針の閣議決定という最も重要な第一関門にようやく到達しました。しかし、昨年9月には菅前首相の突然の辞任で議論は失速。構想の肝である「縦割り行政の打破」は、すでに骨抜きになった感が否めません。
全国に比べて特に状況が深刻な沖縄では、国の改革に合わせて、より一層子供施策を充実させていく必要があります。国だけでなく、県や市町村にも積極的な改革を求めていく必要があるのです。こども家庭庁を巡るこれまでの経緯を通して、今後の沖縄の子供施策を考える2回シリーズの後編です。
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何のための省庁再編だったか?
こども家庭庁創設の一番の目的は何といっても関係省庁間の縦割りの解消にあります。あらゆる環境に置かれた子供たちに対して、切れ目なく、きめ細かなに対応していくためには、関係省庁の既存の役割分担を見直し、大胆に一元化していく必要があるのです。さらには、子供政策に係る権限を一元化することによって関連予算をこれまで以上に獲得し、子供政策を社会の真ん中に据える「こどもまんなか社会」の理念を実現するという大目標があるのです。
しかし、厚労省と内閣府の子供関連部門はこども家庭庁に移管されるものの、文科省の担当業務はほとんど移管されないこととなってしまいました。例えば、保育所と認定こども園の担当はこども家庭庁となりますが、幼稚園は引き続き文科省が担います。あるいは、子供の貧困や児童虐待といった問題はこども家庭庁が担うことになりますが、不登校やいじめは、文科省とこども家庭庁が共同で対応するといった具合です。これでは、重要な論点でいつもこども家庭庁と文科省に権限や予算が分散された状態となってしまいます。
縦割りを打破し、「こどもまんなか社会」の実現を目指すという本来の目的を考えれば、原案のこども家庭庁と文科省を統合するほどの思い切った改革が必要だったのではないでしょうか。
沖縄県への改革の波及
こども家庭庁創設という国の改革に対して、沖縄県における子供施策は今どのような状況にあるのでしょうか。県における子供施策は、主にこども生活福祉部と教育委員会が担っています。こども生活福祉部には、保育所や認定こども園などを担当する子育て支援課、児童虐待やひとり親支援などを担当する青少年・こども家庭課、子供の貧困などを担当する子ども未来政策課などがあります。教育委員会は、政府における文科省と同じく、学校教育を中心に教育全般を担っています。
お気づきでしょうか。組織体制として、県のこども生活福祉部がまさに国のこども家庭庁に対応しており、教育委員会がそのまま今まで通り文科省に対応するような形になっているのです。つまり、子ども家庭庁が創設されたところで、県行政に対しては大した影響をもたらさないということになりかねないのです。例えば、県の主要施策である「沖縄県子どもの貧困対策計画」や官民挙げた「沖縄子どもの未来県民会議」の取組はこども生活福祉部が主担当ですが、教育委員会といかに密接に連携していくかが鍵となります。しかし、こども家庭庁創設という国の改革の動きにもかかわらず、これら県の子供施策への波及があまり見込めないと言えるのです。
大阪府箕面市に見る「教育委員会」の可能性
県に限らず市町村の組織体制もほぼ同じような状況で、こども家庭庁の所管業務を福祉部局が、文科省の所管業務を教育委員会が担う形で整理されています。国のせっかくの大きな改革も、より子供に身近な地方行政に波及しなければ、当然効果は限定的になってしまいます。国の改革の流れを県や市町村でも生かす手はないのでしょうか。