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こども家庭庁と沖縄(下)「こどもまんなか社会」を創るには
- 2022/1/4
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地方自治体における改革を考える上で非常に参考になるのが、大阪府箕面(みのお)市の事例です。箕面市では、福祉部局が担っていた保育所や子育て支援センター、母子保健、児童虐待対策といった業務をすべて教育委員会に移管し、子供施策の予算と権限を一元化するという全国的にも珍しい大改革を行いました。これにより、これまで分断されていた教育と福祉の分野が現場レベルまで大きく融合し、乳幼児健診や母子保健の場で充実した子育て支援サービスを展開するなど、大きなメリットが生み出されていきました。
中でも注目なのが、学校や福祉の現場で得られる様々な情報に市民の基礎情報まで融合して開発された「子ども成長見守りシステム」です。子ども1人1人の学力・体力・生活面などの成育に関する情報に対して、生活保護受給の有無や非課税世帯の該当情報、児童相談所にある家庭環境に関する情報などをリンクして、子供を取り巻く環境を幅広く判定できる画期的なシステムを構築したのです。このシステムにより、これまで見えてこなかったリスクが早期に発見でき、早めに支援を充実させることができるようになりました。まさに教育と福祉を教育委員会に一元化したことで得られる最大のメリットとも言えるでしょう。
沖縄で「こどもまんなか社会」を創るには
「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」により、学校など教育に関する事務は教育委員会が担うと規定されており、これらを福祉部局に移管することができないため、逆に教育委員会に集約するという方法を箕面市は取りました。しかし、既存の体制を変革するには大変なコストを要します。また、箕面市の「子ども成長見守りシステム」には個人情報保護という厚い壁を乗り越えるといった労力もありました。組織の形を変えたり、新しいシステムを作ることだけ見ていては、真に効果ある施策の実行にはつながりません。改革すること以上に、持続可能な仕組みを整えなければ意味がないと言えます。
しかし、沖縄の子供たちを取り巻く厳しい環境がなかなか改善されない中、子供施策の考え方は現状維持で良いと言えるでしょうか。県も市町村も、厳しい現実に直面し、これまで様々な努力を払ってきたはずです。県が力を入れる「沖縄県子どもの貧困対策計画」では、平成28~令和3年度の実行期間において、203もの関連事業を展開し、41指標の9割(37指標)で達成または改善したと評価されました。それでも、この数字にはあまり実感が伴わないと感じます。これまでのやり方の抜本的な見直しをもう避けては通れないと思うのです。大きな改革には大きなリスクやコストが伴いますが、思い切って踏み込む覚悟が必要です。子供たちの成長は大人の都合を待ってはくれません。少しでも早く子供を中心に据えた社会を実現するには、行政こそ思い切って子供施策を一元化する覚悟を見せなければならないのではないでしょうか。