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コロナ禍に子どもの遊びと学びを守る~対策ガイドブック公開~
- 2021/5/23
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新型コロナ対策に追われる社会の中で、声を上げられない小さな子どもたちの遊びと学びの場をどう守っていくか、模索が続いている。このほど保育園や学童クラブ、子ども食堂や児童館といった「子どもの育ち」に関わる県内事業者が日々の運営で直面する疑問や悩みをアンケート調査されたものをたたき台に、専門医との勉強会を経てまとめた対策ガイドブックが公開されている。
沖縄県学童・保育支援センターHPでガイドブック公開
アンケートの取りまとめや勉強会での内容を反映させ、NPO法人沖縄県学童・保育支援センターのホームページで「子どもの居場所感染症対策ガイドブック」が公開されている。
すでにガイドブック5千部とリーフレット7万5千部は県内の保育園や児童館、学童クラブなどに配布されているが、同時にウェブ上でも公開しており、新型コロナの感染状況に応じて内容は更新されていく予定だ。ファイルをダウンロードして印刷することもできる。
国や県、日本感染症学会などの関連情報ページもQRコードで紹介されている。新型コロナウイルスについての基礎知識や、子どもの発達についてなど、小さな子どものいる家庭にも役立つ内容となっている。
☆NPO法人 沖縄県学童・保育支援センター
https://www.okinawagakudou.com/
「子どもの育ち」に関わる人たちの勉強会
ガイドブック作成に先立って去年12月、児童館や保育園、子ども食堂などで子どもの育ちに関わる県内62カ所の事業者から寄せられたアンケートを基に、県立中部病院感染症内科医の高山義浩医師を招いての勉強会が開かれた。無邪気で元気な子どもたちが触れ合ったり、遊びを通して社会性を身に着けたりすることは必要不可欠な一方、事業者には新型コロナ対策が求められる。マスクを自発的につけられない小さな子どもへの対応、部屋の換気や消毒の頻度など質問は多岐に渡った。
高山医師は「感染対策の基本は、飛沫と接触を予防するというところ」と前置きした上で、マスクや感染予防ができる子には教育の意味も含め覚えてもらえる努力を訴えた。同時に対策を心掛けながら子どもたちの居場所を守ろうとする関係者に「一人の親としてありがたく思う」とエールも送った。
垣根を越えてつながる事業者
ガイドブックを公開する沖縄県学童・保育支援センター事務局の伊波奈津美さんは、情報発信もさることながら「(保育園や子ども食堂など)事業の垣根を越えてつながり合うこと、子どもに関わっているいうことを中心に置いてつながり合った上で、今できることを探していくことが大事。また新しい困りごとが出たらそれを基に日々(情報を)積み重ねていくことで新型コロナを乗り越えていけたら」と話す。
またガイドブックの内容を取りまとめた国場児童館(那覇市)の山崎新館長は「子どもが大人や社会に対して発信する窓口がない。子どもに関わる大人たちから共同でメッセージを出す窓口が必要で、これは行政だけでなく現場の僕たちがつくっていかないといけない」と力を込める。
「子どもの育ち」の現場の声
学童クラブや児童館に子ども食堂も兼ねている、みどり町児童センター(うるま市)の山城康代館長はガイドブックの完成公開を歓迎した上で、コロナ対策と同時に子どもの遊びを守る重要性を語る。
「子どもたちは不安になると私たちにくっついてきます。助けを求めてきたりもするし、遊びの中で子どもたちは社会性を学んでみたり、人との関わり方を学んでいる最中なので、そこを(新型コロナ対策で)取り去るということは、子どもたちの発達上の問題があるのではないかと思います。」
0歳から5歳児まで140人ほどが通うコスモストーリー保育園(うるま市)には、複数の子どもを預けていたり、仕事をしている保護者が多い。子どもを預けられる場所はコロナ禍でも必要だ。天願順優園長は子どもたちの食事時間を決めずに密を避ける工夫をするなど、子どもたちや保護者を支えている。
「密を避けるのは大事ですが、子どもたちに”来ないで””集まらないで”と制限すると、かえって不安にさせてしまうという課題がありました。子どもたちが主体的に成長する姿を保育内だけでなく保護者と地域の方々と共有しながら、元気な子どもたちの(ポジティブな)影響が周囲に広がっていくといいなと考えます」
子どもの遊び・学びを守るために
今回の感染症対策ガイドブック作成は、県内の子どもの育ちに関わる事業者同士が互いに知り合い、実際に話し悩みや解決の糸口を共有するという”連携”の意味でも大いに役立っている。新型コロナで右往左往する社会の中でも、子どもの成長は待ったなしだ。友人関係や、家の外で経験や知恵を得る機会を奪ってはならないという強い思いは、子どもの遊び・学びを守るためにできることへの”行動”につながっている。感染予防の対策はもちろん大切だが、保護者や地域の、子どもの特性や居場所への理解も重要となる。新型コロナが子どもの健全な成長の妨げとなってはならない。