韓国の高校で「異文化の架け橋」 うるま市出身與古田さん

 

ハートのハンドサインをする韓国の高校生と與古田さん=手前右から2人目(本人提供)

 韓国の首都ソウルから南に車で約90分のピョンテク市(平沢市)にある「ピョンテク機械工業高等学校」の日本文化体験クラブで沖縄の歴史と文化を伝えるなど異文化授業を行う、うるま市出身の與古田まり子さん(33)。日韓で複雑な問題が多い中、「民間の取り組みで沖縄という窓から韓国との絆を強めることや異文化の架け橋になることが私のライフワーク」だと語る。與古田さんの授業の様子や生徒たちの反応、韓国に移住して感じた韓国の印象なども聞いた。

夫の異動で韓国へ

 與古田さんは、沖縄で数年間教員を務めた後、嘉手納基地で勤務していた韓国系アメリカ人で米軍人の夫の異動により2017年に韓国に引っ越し、2019年からピョンテク市で暮らしている。長女を沖縄で出産、次女を韓国で出産した二児の母でもあり、家族の中には、沖縄、日本、韓国、アメリカの4つの文化があるという。

 ピョンテク市は、新興の港湾都市であり、韓国海軍第2艦隊と在韓米軍の軍港がある。ピョンテク機械工業高等学校は、 大学進学者よりサムスンなど大企業に就職する人が多く、與古田さんは、自ら日本語を学びたいと集まった生徒が所属する日本文化体験クラブで、1コマ50分の全8回講義を受け持っている。

 校内にはメーカースペースという校舎があり、席がホワイトボードで区切られたスペースやクリエイティブイノベーション教室がある。與古田さんは「韓国は英語を話せる人も多く、ITが進んでいる。コロナが始まった時は、感染追跡アプリがすぐに開発され、ドライブスルー方式PCR検査をいち早く実施している。韓国語ができなくてもカフェやスーパーでほとんどのスタッフが英語で対応してくれる。 消費者や相手のニーズに素早く応えるということを日常生活で韓国に対して感じていたので、校内のクリエイティブな学習スペースを見たときは、さすが韓国だと感じた」と印象を話す。

ピョンテク機械工業高等学校(本人提供)

ホワイトボードで席が区切られたスペース(本人提供)

講義を行った部屋にてディスカッションの様子、机がなく席は階段状(本人提供)

沖縄に興味を示す韓国の生徒たち

 與古田さんは、第2回目の講義のテーマを「沖縄の歴史と文化」と題して、沖縄と韓国の交流の歴史と共通点などを伝えた。生徒のほとんどが日本本土や沖縄に行った経験がなく、ましてや沖縄という言葉を聞いたことがない生徒ばかりで、時折、質問タイムやグループディスカッションを設け、生徒の疑問や興味を引き出しながら進めていった。

 琉球王朝時代から現代に至る沖縄の歴史の中で、與古田さんは、糸満市摩文仁の「平和の礎」に刻銘された朝鮮半島出身の戦没者や「韓国人慰霊塔」の存在、沖縄独特の文化である旧暦行事や食べ物を紹介し、「沖縄はチャンプルーな歴史や文化があり、多様で多文化な島だからこそ、世界に平和や『命どぅ宝』のメッセージを発信する島であるということ」をメッセージとして何度も繰り返し伝えた。

沖縄の話を真剣に聞く生徒たち(本人提供)

沖縄と韓国の共通点に親近感

 授業の後半では、生徒と一緒に「沖縄と韓国の共通点」を探った。與古田さんは、韓国系アメリカ人の夫との結婚や韓国での生活から沖縄と韓国は共通点が多いことを肌感覚で感じるようになった。

 沖縄で歴史を語る際に有名な「万国津梁の鐘」には「鍾三韓之秀」と記された銘文がある。朝鮮の優れた文化、知識を集めるという意味があり、中国をはじめ日本や朝鮮、東南アジアとの交易を繰り広げた海外に雄飛する沖縄・琉球の象徴を表している。與古田さんは、その銘文や、百済(韓国)から倭の国(日本)に献上され、日本の国宝となっている「七支刀」が沖縄で復元されたことなどを取り上げ、沖縄と韓国の友好について話した。

 また、海外移民の多さ、タンカーユーエーと似た満1歳の行事、模合文化、米軍基地問題など、歴史や文化、言語で多くの共通点があることに触れた。

 だからこそ、「韓国と沖縄は友達なんだ。日韓で複雑な問題もあるが、一緒に平和を築くPeace Makersになりたい」と発信し、生徒たちは「沖縄という島があることを知らなかった」「韓国と沖縄がこんなにも共通点があるとは思わなかった」と驚いた様子で親近感を感じたようだった。

 また、生徒たちには「沖縄に行って自分で感じてみたい」「ただの観光で行くような場所と思っていたが、今は万国津梁の鐘を見てみたいし、沖縄の歴史や文化を自分の目で見てみたい」との声もあった。

民間の取り組みで手を取り合う日韓交流

 韓国と日本は、歴史的、政治的背景から解決が困難な問題が多く、争いが長年にわたって続いている。政治、経済、軍事、領土問題などこれらの問題がメディアなどを通じて、相手国・国民に対する嫌悪の感情が掻き立てられることもある。

 與古田さんは、日韓問題に触れ、「民間でこのように理解を促進する取り組みが人と人を結びつける。沖縄という窓から韓国との絆を強めることなど、異文化の架け橋になることが、チャンプルーで『命どぅ宝』な沖縄で生まれ育った私のライフワークなのかもしれない。バックグラウンドが異なる社会や人たちが調和すると、より平和な世界につながる」と話した。

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安里 三奈美

投稿者記事一覧

ボリビア在住3年、1児の母。フリーライターとして観光や沖縄県系コミュニティーについてWEBや紙媒体で執筆、寄稿等を行う傍ら、家系図や家族史・自分史の制作会社の代表も務める。2011年に県系の若者をつなぐネットワークを構築、県系若者が集う大会を世界各地で開催。2015ミスうるま。著書に「刻まれた21cm」(文芸社)

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