シークヮーサーはどこから来たの?数万年前の旅の記憶、OISTが解明

 

 「シークヮーサーはどこから来たの?」―。そんな疑問に答える研究結果を、沖縄科学技術大学院大学(OIST、恩納村)の研究チームが明らかにした。沖縄の柑橘類の代表格・シークヮーサー。その歴史とは。研究成果は26日に科学誌「Nature Communications」に掲載された。

解明されてなかった交配の“親”

 シークヮーサーなどをはじめとする東アジアの柑橘類の起源については、これまで詳しいことは明らかになていなかった。そこで、OISTが参加する研究チームは東アジア69種類のミカン科品種やアジア大陸の品種の遺伝情報を解析した。

 すると、シークヮーサーは「数万年前にアジア大陸のマンダリン類(柑橘類の上位分類)が当時に陸続きだった琉球列島へと運ばれた末、琉球在来の柑橘類と交配してできた可能性が高い」と結論付けられた。

 この「琉球在来の柑橘類」は、実が小さくて酸味が強く、食用としては馴染まなかったため、これまであまり注目を浴びることがなかった。そのため今まで遺伝学的な研究対象となる機会がなく謎の存在とされていたが、今回の調査で新種「タニブター」として学名を記載されることとなった。

シークヮーサーの「無性生殖」が商業的なメリットにも

 シークヮーサーが交配種で、片方の親が琉球在来の「タニブター」とすると、もう片方の親である「アジア大陸のマンダリン類」の起源はどこにあるのか。

シークヮーサーの花(OIST提供)

 その答えは現在の中国南部・湖南省にあった。湖南省の山岳地帯の野生マンダリン類の亜種(種の下位区分)の1つが、受粉などを伴わない無性生殖で子孫を増やし、先祖代々遺伝的に全く同じ情報を持つ種だった。

 それを親に持った沖縄のシークヮーサーも同じように無性生殖の能力を獲得したため、結果として「同じ品質の農産物を安定して作ることができる」というメリットが生じ、商業的に寄与することとなった。

「新品種の開発などに可能性」

 OISTの分子遺伝学ユニットを率いるダニエル・ロクサー教授は、今回の研究について同大学HP上で「マンダリン類の多様化とその地域の生物地理との関係を解明することはとても興味深いことですが、さらに今回の研究成果は、商業的な価値も秘めています。シークヮーサーの起源を探ることで、他の交配種の発見や、病気や干ばつに強い新品種の開発など、未来に向けてさまざまな可能性を生み出せます」と述べている。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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